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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社AIR-U 代表取締役 田中 康之助

IPOを実現した通信ベンチャーがたどり着いた使命

通信環境の「当たり前」を、あらゆる人々に提供したい

株式会社AIR-U 代表取締役 田中 康之助

前ページでは、コロナ禍を機に新たな使命にたどり着いた、AIR-U代表の田中氏が事業にかける想いやIPO後の戦略を紹介した。同社が今後、事業を推進していくうえで、IPOによって高まった「信用力」や「資金調達力」は強力な武器になるにちがいない。ここでは、同社がIPOを目指した理由や、TOKYO PRO Marketへの上場で得られるメリットなどについて、同社の上場を支援した日本M&Aセンターの雨森氏も交えて聞いた。
※下記はベンチャー通信88号(2023年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

時間やコストの負担を、上場準備にかけたくなかった

―TOKYO PRO MarketへのIPOにいたった経緯を聞かせてください。

雨森:AIR-Uさんは非常に収益力の高い会社だったので、有力なM&Aの買い手企業候補になるだろうと注目し、当社からアプローチしたのがきっかけでした。そのときに、田中さんがIPOを目指していることを知りました。折しも当社は、2019年にTOKYO PRO Marketの上場支援業務を行う「J-Adviser」の資格を取得していました。AIR-Uさんは、キャリアを問わずにインターネットに接続できる「クラウドSIM」という次世代技術を扱っており、技術面でも注目されていました。今後キャリアとも対等に事業展開できそうな将来性があったのです。そこで当社では、「こんな会社が上場してくれれば、TOKYO PRO Marketの知名度も確実にあがるだろう」と期待し、この市場へのIPOを提案してみたのです。

田中:私はもともと、東証マザーズかJASDAQ(※)へのIPOを目指していましたが、雨森さんから提案を受け、TOKYO PRO Marketも魅力的な市場だなと思いましたね。その理由は、同市場には株主数や流通株式といった「形式基準」がなく、一般市場と比べて準備負担をかけずにIPOを目指せるからです。常勤監査役の専任などコーポレート・ガバナンスの構築も任意なので、社員数が少ない当社にとってはありがたい上場条件でした。経営のメインである事業を推進するなかで、上場準備に多くの時間や費用の負担を背負いたくないとも思っていましたから。
※東証マザーズかJASDAQ:いずれも現在のグロース市場

―田中さんが最初にIPOを目指したのは、いつ頃ですか。

田中:創業時から上場を考えていましたね。「上場」という言葉を聞くと、私はよく父を思い出すんです。私が就職活動をする際、安定志向の父からは「とにかく上場企業に就職しなさい」とさんざん言われたのです。私自身はまったくこだわってはいなかったのですが、結果として入社したのは、酒類販売最大手の上場企業。その後、中途入社したのも上場の通信事業会社でした。最初は「上場企業とはなにか」すらよく理解しておらず、「ほかよりも給与が良い」程度のイメージをもっているだけでした。結果的に私はその後、独立することになったのですが、その際には何人かの仲間が、立ち上がったばかりのAIR-Uのメンバーに加わってくれました。この仲間たちと将来を描くなかで胸に去来したのが、「上場企業に入りなさい」という父の言葉でした。安定した大手企業を辞めて、私とともに新しいチャレンジに加わってくれた。そんな仲間たちとその家族のことを考えたとき、必ずAIR-Uを上場させて、安心できる会社にしてみせようと決意したのです。

上場のデメリットが小さい、「一石二鳥」なマーケット

―実際にIPOを達成し、感想はいかがですか。

田中:さまざまな面で、上場をして良かったなと感じています。なによりも、社員やその家族が大変喜んでくれました。それに、「さっそくローンを組んで家を買った」という社員も少なくありませんでした。事業を展開していくうえでも、以前より信用力や資金調達力が大きく高まったことを、上場の確かな成果として実感しています。

雨森:上場審査後、J-Adviserである当社は東京証券取引所からヒアリングを受けるのですが、その際、「なぜ一般市場を狙わないのか」と聞かれたくらいAIR-Uさんは将来性のある会社だと思っています。上場時の時価総額は200億円以上と、TOKYO PRO Market史上で3本の指に入る金額がついたことも、将来性の高さを示しています。

―IPOを目指すベンチャー企業の経営者にメッセージをお願いします。

雨森:TOKYO PRO Marketは、経営の自由度が制限されるといった上場の「デメリット」を抑えつつ、信用力が高まるといった上場の「メリット」を享受できる魅力的な市場です。そんなTOKYO PRO Marketへの上場企業数はほぼ毎年増えています。今後も、AIR-Uさんのような将来性のある会社がどんどんと上場してくれることで、日本の株式市場全体が活気づいていくことを期待しています。

田中:雨森さんが言う通り、TOKYO PRO Marketはデメリットが小さいながらもメリットが大きな、「一石二鳥」の市場だと感じています。実際に当社でも、日々の株価に一喜一憂するようなこともなく、経営に専念しながら上場の成果を得られています。当社は今後、TOKYO PRO Marketで体力をつけながら、一般市場にステップアップすることも視野に入れています。若いベンチャー企業経営者のみなさんにも、自社の成長のファーストステップとしてTOKYO PRO MarketへのIPOをおすすめしますよ。
PROFILE プロフィール
田中 康之助(たなか こうのすけ)プロフィール
1975年、福岡県生まれ。1997年に日本大学を卒業後、新卒で酒類販売企業へ入社。退社後、大手通信事業者に入社。固定回線事業やMVNO事業などに携わる。2017年に株式会社AIR-Uを設立し、代表取締役に就任。
雨森 良治(あめもり よしはる)プロフィール
1972年生まれ、山口県出身。1994年に神戸大学を卒業後、大手流通業、経営コンサル業を経て、2006年、株式会社日本M&Aセンターに入社。約13年間にわたり西日本を中心にM&Aを通じた事業承継支援を行った後、2020年よりTOKYO PRO Market上場支援事業の統括責任者に就任。
株式会社AIR-U 企業情報
設立 2017年1月
資本金 3,000万円
売上高 101億1,200万円(2022年12月期)
従業員数 12名(役員含む)
事業内容 電気通信事業法に基づく通信回線利用加入者の募集および利用権の販売促進に関する代理店業務など
URL https://air-u.jp/
株式会社日本M&Aセンターホールディングス 企業情報
設立 1991年4月
※株式会社日本M&Aセンターは、株式会社日本M&Aセンターホールディングス(東証プライム上場:2127)のグループ会社です。
資本金 37億8,500万円
売上高 404億100万円(連結、2022年3月期)
従業員数 1,066名(連結、2022年12月末現在)
事業内容 M&A仲介、PMI支援、企業評価の実施、上場支援など
URL https://www.nihon-ma.co.jp/
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