ベンチャー通信Online > 起業家インタビュー > IT > 株式会社Fate 代表取締役社長 小山 雄太郎 / 取締役副社長 熊谷 政人

INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社Fate 代表取締役社長 小山 雄太郎 / 取締役副社長 熊谷 政人

「自己実現」を促す人材育成型ベンチャー経営者の信念

実力主義の環境で能力を磨けば「顧客第一主義」を貫く人材になれる

株式会社Fate 代表取締役社長 小山 雄太郎 / 取締役副社長 熊谷 政人

コロナ禍による経済活動の停滞で、大きな打撃を受けた業界の1つが人材派遣だ。それでも、同事業を主力の1つとするFateは、コロナ禍真っ只中の2022年2月期から2023年2月期にかけて売上を倍増させた。その要因について同社代表の小山氏は、「『顧客第一主義』を貫ける人材が育っているから」だと語る。そうした社員の成長を実現できた背景には、同社独自の人材育成に関する考え方があるという。一体、どのような考え方なのか。同社副社長の熊谷氏も交えて、話を聞いた。
※下記はベンチャー通信89号(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナ禍の逆境にあっても、売上で2倍以上の成長を達成

―事業内容を教えてください。

小山:おもに人材派遣事業とコールセンター事業の2つを手がけています。人材派遣事業では、対面販売を行うスタッフをはじめ、店舗運営の指導を行うスーパーバイザー(以下、SV)、事務作業員、工場作業員まで、多種多様な職種の人材を派遣しています。中でも得意としているのが、携帯ショップなどへの販売員の派遣です。コールセンター事業では、電気やガス、インターネット回線といった、パートナー企業が提供するサービスの販売やカスタマーサポートなどを代行しています。当社が2つの事業においてサービスを提供しているパートナー企業は、大手通信会社から立ち上げ1年未満のベンチャー企業まで大小さまざまで、現在は計120社ほどです。

熊谷:コロナ禍で対面販売や工場の稼働がマイナスの影響を受け、人材派遣業界では苦戦を強いられる事業者が目立つなか、当社はコールセンター事業だけでなく人材派遣事業でも順調に業績を伸ばしてきました。当社の売上高は2022年2月期に14億4,000万円、2023年2月期に33億7,000万円と、2倍以上の成長を達成しています。

―事業が好調な理由はなんでしょう。

小山:「顧客第一主義」を徹底し、パートナー企業の期待を超える成果をあげ続けているからだと思います。どちらの事業においても、エンドユーザーとの信頼関係構築には特にこだわっており、契約を結ぶことをゴールにするのではなく、「お困りごと相談」に乗るといったスタンスを徹底しています。そうすることで、エンドユーザー一人ひとりの満足度を高め、リピートや紹介、口コミによる受注獲得へとつなげていくのです。コールセンター事業だけでなく、人材派遣事業でも高いスキルとサービスマインドを兼ね備えた人材を派遣できるのは、社員として雇った人材へ事前に教育を施し、能力を高めているからです。そのため、当社では専門的な能力を求められるSVも安定して派遣することができています。この教育の部分こそが、一般的な派遣会社にはない、当社の強みだと考えています。

―なぜ、事前の教育が可能なのですか。

熊谷:当社が人材派遣事業だけでなく、コールセンター事業も手がけているからです。人材派遣事業だけを行っている会社では、研修期間中に任せられる業務がなく給与を支払うことが難しいので、派遣する人材の教育については派遣先でのOJTに頼らざるをえません。一方当社では、研修期間中にコールセンター業務で一定の収益をあげてもらいながら、エンドユーザーとのコミュニケーションを実践的に学んでもらいます。それと並行して独自の教育プログラムを受けてもらったうえで、現場へ派遣しているのです。

―どのようなプログラムでしょう。

小山:私自身が携帯ショップの販売担当者としてトップクラスの業績を残すなかで培ったノウハウを共有し、さらにブラッシュアップするプログラムを組んでいます。そこでなにより大切にしているのは、最初に申した通り「顧客第一主義」です。それは販売員として第一線で働いてきた経験を通じて、顧客のメリットを最大化することこそが信頼獲得につながり、結果的には成果をあげる一番の近道であると実感してきたからです。それだけでなく、派遣先やコールセンター業務の委託元の業種がどんどん広がってきており、多種多様な分野のノウハウが次々と社内に蓄積されてきました。そのため、それぞれの派遣先の業種に特化した教育プログラムも一層充実しています。

「自分一人の幸せ」から「かかわる人みんなの幸せ」へ

―小山さんが起業した経緯を教えてください。

小山:携帯ショップの販売担当者を務めた後、縁があって人材派遣会社へ転職したのですが、そこでもすぐにトップクラスの業績をあげることができ、2年で部長職につきました。携帯ショップ時代も含め、現場でバリバリ働いていたときは、自分自身が実績をあげることにやりがいを感じていました。しかし、役職が上がる過程で部下や取引先が増えていくにつれて、自分一人の幸せだけでは満足できなくなってきました。次第に「自分がかかわる人たちすべてを幸せにしたい」という想いを抱くようになったのです。そうなると、部長職ではできることに限界を感じ、自ら理想の会社を立ち上げることを決意しました。その際に目標としたのは、不合理な制約を受けずに「自己実現できる会社」です。思い描いた未来を自分の努力でつかみ取る、そういった自己実現を果たせる場を提供することこそが、社員の幸せにつながると考えたのです。

―実際の経営において、そうした想いはどのように反映されているのでしょう。

小山:おもに2つあります。1つは実力主義を徹底している点です。私が社員として働いてきたなかで、ずっと疑問を抱いてきたのが、学歴主義と年功序列の考え方でした。私は携帯ショップでの販売でも人材派遣の営業でもトップレベルの成績をあげてきたのですが、必ずしも成績通りに評価されていないと感じる場面が多々ありました。高学歴なわけではなく、年齢も若かったからだと思います。けれども、仕事の能力と、学歴や年齢は直接関係ないはずです。そこで、当社では、学歴や年齢といった色眼鏡を通して評価せずに、社員一人ひとりとしっかり向き合い、その能力とやる気をダイレクトに評価するようにしているのです。

熊谷:実力主義というと、冷たい印象を受けるかもしれませんが、当社は「ついて来られない人は置いていく」のではなく「みんなで高みを目指す」ことにこだわっています。それが表れているのは、部署ごとに独立採算制をとっている点でしょう。

独立採算制をとることで、チームで成長する意識を醸成

―独立採算制とは、どういった体制なのですか。

熊谷:会社全体の経営計画をベースに、部署ごとに予算を割り振るという点は一般的な企業と同様です。ただし、当社では部署内の人員配置や評価に加え、予算から上振れた収益の使い道などは各部署が自由に決められるようにしています。たとえば、上振れ予算を賞与として部署内の人員に還元することもあれば、販促のために広告を出稿したり、求人を出して新たな人員を雇ったりすることもあります。さらに、人事評価についてはチームとしての成果が大きく影響するため、チーム内で積極的なノウハウ共有、相互フォローが行われています。それが社員一人ひとりの、ひいては会社の成長につながっているのです。

小山:こうした実力主義は、社員が存分にチャレンジできる環境を用意してこそ真価を発揮すると考えています。それが当社が目指す、「自己実現できる会社」をつくり上げるための2つ目のポイントなのです。

―どのような環境を用意しているのでしょうか。

小山:年齢や学歴、職歴にかかわらず、やる気のある人材に対しては新たな挑戦を積極的に後押ししており、必要に応じて役職や予算を与えています。また、人材派遣事業、コールセンター事業ともにパートナー企業の事業分野は多岐にわたっているため、環境を変えて何度でもチャレンジすることが可能です。実際、土木作業員から転職してきた人材が、不慣れな営業職で一度は挫折を味わいながらも、新たなポジションで再び這い上がり、入社3年、27歳でグループ会社の役員に就いた例もあります。

熊谷:当社にはこうしたチャレンジの機会が数多くあり、かつ、実力主義の環境があるからこそ、社員は能力を存分に伸ばせるのです。その能力をフルに活用することで、「顧客第一主義」を貫く人材へと育ち、顧客満足度の高いサービスを提供できるようになる。そうした成果を積み重ねた先に、「自己実現」という結果が生まれるのです。また、プライベートでの自己実現も支えるべく、会社の利益をできる限り多く社員に還元しています。当社の社員は平均年齢が20代後半でありながら平均年収が600万円(※)となっていることから、その想いは少なからず果たせているのではないかと思っています。
※600万円:正社員のみの実績

多角化とスケールアップで、売上1,000億円を目指す

―今後のビジョンを教えてください。

小山:まずは2026年2月期での売上100億円突破が目標です。人材派遣事業もコールセンター事業も順調に拡大しており、いまの勢いで成長を続ければ、十分に達成可能だと考えています。売上100億円の達成後は株式上場も視野に入れており、上場によって得られる資金を、シナジー効果が期待できる事業体への投資やM&Aに充てつつ、グループとして事業をスケールアップしていく計画です。現在、グループ会社は3社ありますが、事業の多角化を進めながら最終的には10社程度まで増やし、グループ全体で売上1,000億円を目指します。

熊谷:グループの規模が拡大すれば、より多くの人材がさまざまなことにチャレンジしながら、自己実現を果たしていけるようになるはずです。「なにかを成し遂げたい」と熱い想いをもった人材たちとともに、それをやり遂げていくことが私にとっての自己実現ですね。
PROFILE プロフィール
小山 雄太郎 (こやま ゆうたろう)プロフィール
1992年、東京都生まれ。2010年に東京都立荒川商業高等学校を卒業後、寿司店に入社し、板前として従事。退職後、通信系ベンチャー企業の管理職を経て、2018年に株式会社Fateを設立して代表取締役社長に就任する。
熊谷 政人 (くまがい まさと)プロフィール
1987年、山形県生まれ。2003年に東海大学山形高等学校を中退し、建設業に従事。2007年に上京し、接客業に5年間携わった後、2015年に通信会社に入社。2016年、取締役に就任。2020年に株式会社Fateに入社し、同年から現職。
企業情報
設立 2018年3月
資本金 3,903万5,776円
売上高 33億7,000万円 (2023年2月期)
従業員数 139名 (2023年2月現在)
事業内容 人材派遣、コールセンター運営など
URL https://fate-corp.co.jp/
※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。