INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
東大卒のエキスパートが興したAI特化型システム開発ベンチャーの志
つねにAI開発の最先端に身を置き、社会の進化を支える存在でありたい
株式会社Nuco 代表取締役 CEO 小山内 美悠
Sponsored 株式会社Nuco
『ChatGPT』の登場で、一段と身近になりつつあるAI。今後、世の中のサービスやビジネスの進化に不可欠な技術だけに、AI開発ベンダーの存在が注目を集めている。そうしたなか、AI開発に特化した高度な技術力で、規模の大小を問わず、クライアントから高い評価を集めているシステム開発ベンチャーがNucoだ。「データとアルゴリズムで新時代を創る」を企業理念に掲げる同社代表の小山内氏に、同社が手がけるAI開発の先進性や今後のビジョンなど聞いた。
※下記はベンチャー通信89号(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
ユーザーに届けられないと、精度の高いAIも意味がない
―事業内容を教えてください。
AIに特化したシステム開発を手がけています。当社が開発するシステムやWebサービスのなかに、AIによる機械学習のロジックを組み込むことで、顧客企業の社内に埋もれているさまざまなデータを駆使し、新たなサービスやビジネスに活かす仕組みを提供しているのです。AIシステムの開発に特化している一方、ビジネスドメインや顧客の企業規模は多様で、大手企業からスタートアップまで幅広い分野でサービスやシステムの開発を支援しています。2017年6月の設立以来、30以上のAIシステムを開発してきました。
―たとえば、どのようなシステムを開発しているのですか。
人材系企業のポータルサイトの開発事例では、求人広告に記載されたテキスト内容と、絞り込み検索用に設定されるチェック項目との間に齟齬がないかを検出するシステムを開発しています。たとえば、求人企業が自由に入力するフリーテキストには「週休2日」「最寄り駅直結」といった条件が記載されているのに、検索条件のチェックボックスが外れていれば、絞り込み検索では表示されません。こうした人為的ミスをAIの自然言語処理で検知し、間違った内容の入稿を防ぐといったシステムです。
ほかにも、最近では大手アパレル企業向けの売上予測システムの開発も請け負いました。全国に数千ある店舗間ではそれまで、バイヤーの予測精度の違いで売上や在庫発生量に大きな格差が生じていたといいます。そこで、社内に蓄積されたPOSデータや顧客の来店情報など事業上の各種データをAIで分析し、優秀なバイヤーよりも正確な売上予測を行うプログラムを当社が開発し、全店舗に展開した事例もあります。
ほかにも、最近では大手アパレル企業向けの売上予測システムの開発も請け負いました。全国に数千ある店舗間ではそれまで、バイヤーの予測精度の違いで売上や在庫発生量に大きな格差が生じていたといいます。そこで、社内に蓄積されたPOSデータや顧客の来店情報など事業上の各種データをAIで分析し、優秀なバイヤーよりも正確な売上予測を行うプログラムを当社が開発し、全店舗に展開した事例もあります。
―Nucoが手がける開発案件の特徴、強みはどういったものですか。
AI開発の際には、「どのようなデータを学習させるか」「予測モデルをどう構築するか」といったエンジニアの試行錯誤が、AIの精度を大きく左右します。当社には、そうしたノウハウを持つエンジニアが多数在籍し、さらに、開発したAIをサービスやITシステムに実装し、ユーザーに届けるところまで一貫して手がけられる強みがあります。かつて、ある大型のシステム開発で、AI企業が当社を含め2社競合参画したことがありました。2社は別々のAIを開発していたわけですが、AIを実装したプッシュ配信システムとして納品した当社に対し、競合はAIをつくることしかできず、システムへの実装が宙に浮いたままでした。顧客は最終的に、そのAIのシステム実装作業を当社に依頼してきました。その経験から、いくら精度の高いAIを開発しても、それをユーザーに届けられる形に仕上げないと意味がない、ということがクライアントにも理解され、当社の価値が高く評価されるようになりました。
書籍を通じてAIと出合い、独学で開発者の道を切り開く
―Nucoが一気通貫でAIシステム開発を手がけられる理由はなんでしょう。
それは、私自身の経歴やNucoという会社の成り立ちと関係していると思います。私自身、AIエンジニアを目指す際、AI技術はITエンジニアリングの延長線上にあるものと位置づけ、まずITエンジニアとしてのキャリアを築く道を選びました。そして、システム開発を一通り経験した後に、半ば独学でAIエンジニアに転身したという経緯があります。そのため、当社がAI開発を手がけてきた当初から、AIを載せるシステムまで一貫して開発してきました。現在でも、当社の教育方針として、開発者がAIからシステムの最後まで一人で開発できるようになることを重視しています。
―小山内さんは、AIの技術は独学で身につけたのですか。
ええ。母校の東京大学では、農業用水や生活用水といった水の流れに関する力学を研究する「水理学」を学んでいました。しかし、大学卒業後は「業界の成長性」や若くして活躍している先達の姿に魅力を感じ、IT業界に進み、営業の仕事に就きました。AIに興味を持ったのは、営業職として2年半ほど従事していた当時、『ポスト・ヒューマン誕生』という書籍と出合ったことがきっかけです。印刷技術や蒸気機関、コンピュータなど人類の歴史のターニングポイントとなった技術はいくつかありますが、AIもその1つになりえると直感しました。それを読み、「AIなら自分もかかわれるのでは」と思ったのです。理系出身の私は、プログラミングの適性もあり、AIエンジニアに必要な数学も得意でしたから。
―とはいえ、当時はまだ「AIエンジニア」の道はなかったのではありませんか。
そうでした。「AIエンジニア」という職種が存在しないだけでなく、ディープラーニングのアルゴリズムを組める人もほとんどいない黎明期でした。そこで、まずはITエンジニアとしての経験を積み、その延長線上にAI開発の道を切り開こうと考えたのです。当時、未経験者を採用する文化はまだ業界に定着していませんでしたが、業界に身を置くなかでITエンジニア需要の強さは肌で感じてもいましたので、チャレンジする価値はあると。そこで内定をくれたのが、Nucoの親会社であるアドグローブ社です。書籍を読んでわずか数ヵ月後の、2015年8月のことでした。
AI学習の試行錯誤で活きる、長年の経験とノウハウ
―その後はどのようにAIのスキルを身につけていったのですか。
ITエンジニアとしてシステム開発プロジェクトを引っ張る立場になった段階で、数学や統計学のほか機械学習の論文を調べるといった独学を続け、その傍らでライブラリーを自ら触り、ディープラーニングのアルゴリズムを組んでみたりもしました。TensorFlow(テンソルフロー)というオープンソフトウェアライブラリーの勉強会にも参加するなかで、そこで知り合った人から仕事を受けるように。会社と相談のうえ、徐々にAI開発へと業務の主軸を移していき、2017年6月にNucoを設立しました。
―両方を知る立場として、通常のシステム開発と比べて、AI実装システム開発の難しさはなんでしょう。
大きく3つあります。1つは、数学的な難しさです。AI開発には微分積分や線形代数といった数学の知識が必要です。そして、AIの不確実性がもたらす難しさがあります。AIの精度を向上させる際、どれだけ教えたらどの程度賢くなるかを事前に予測することは困難です。その不確実性とどう付き合うか。そして最後に、学習のために目的に沿うデータを準備することの難しさです。ときにはデータが存在せず、類似のデータで代用すべき場合もあります。また、ひと口にAIの「精度を上げる」と言っても、その精度をどのように評価するかの指標自体も適切に定めなければなりません。用いられるサービスやビジネスに合わせ、評価指標自体をカスタマイズしながらAIの精度を高めていく。こうした試行錯誤を繰り返し、学習すべきデータを適切に変化させていくことは、AI開発においてもっとも重要な要素であり、長く実績を積み上げてきた当社の経験とノウハウがもっとも高く評価されるポイントになります。
「人間力」こそ大事なスキル
―今後のビジョンを聞かせてください。
今後、人口減少や少子高齢化が進む日本では、「人手不足」を解消する手段としてビジネスのDXが間違いなく進みます。その結果として溜まっていくデータを処理するAIの利活用は、サービスやビジネス全体を進化させるうえで必須の条件だと考えられます。当社は企業理念に「データとアルゴリズムで新時代を創る」と謳っているように、そうした進化をつねに最先端で支える代表的な存在でありたいのです。「AI開発といえばNuco」といわれる存在になることが目標です。そのために大切なのは、逆説的に聞こえるかもしれませんが、エンジニアの「人間力」だと思っています。
―どういうことでしょう。
AI開発の現場では、技術が飛躍的に進歩し、言語自体の性能も上がり、プログラミングがどんどん簡単になっています。数学や統計学の理解がなければ実装できなかった数年前とは、大きく様相が変わっています。それに応じて、AI開発企業の間で提供するサービスの差は、縮まる方向に進むことが想像されます。では、どこで差が生まれるのか。それは、顧客を理解し、顧客に寄り添って開発を進められる「コミュニケーション能力」であり、AIという不確実性をビジネスに落とし込むための「リーダーシップ」や「交渉力」にほかなりません。そうした能力を総合した、いわば「人間力」こそがAI開発企業に求められるものであり、当社が大事にしているスキルです。
AIは所詮、人間の脳の働きを補助するための「外部演算装置」という位置づけに過ぎません。ただし、そのAIをどう使いこなすかで、サービスの価値をいかようにも高めることができるのがこれからの時代です。そうした時代に、サービスの創り手である顧客をもっとも近くで支え、新しい価値をともに生み出す存在であり続けます。
AIは所詮、人間の脳の働きを補助するための「外部演算装置」という位置づけに過ぎません。ただし、そのAIをどう使いこなすかで、サービスの価値をいかようにも高めることができるのがこれからの時代です。そうした時代に、サービスの創り手である顧客をもっとも近くで支え、新しい価値をともに生み出す存在であり続けます。
PROFILE
プロフィール
小山内 美悠(おさない みゆう)プロフィール
1989年、青森県生まれ。2013年、東京大学農学部卒業後、ITベンチャー企業に入社し、営業職として従事。その後、2015年に株式会社アドグローブに入社。独学でAIの知識を身につけ、AIエンジニアとしての道を歩む。2017年、同社のグループ企業としてAI特化型のシステム開発会社である株式会社Nucoを設立、代表取締役CEOに就任。
企業情報
設立 | 2017年6月 |
---|---|
従業員数 | 49名 |
事業内容 | AIシステムの企画・開発・運営・販売 |
URL | https://nuco.co.jp/ |
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