INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
堅調な推移が続く国内IPO市場を概観
時代の潮流や社会的要請を反映し、国内IPO市場の裾野は広がっている
株式会社東京証券取引所 上場推進部長 荒井 啓祐 / 上場推進部 課長 滝口 圭佑
Sponsored 株式会社東京証券取引所
新規上場企業数が124社(※)にのぼった2023年の国内IPO市場。4年連続で3桁の高水準となった要因について、東京証券取引所(以下、東証)の荒井氏は、ファイナンス環境の好転以外に、「時代の潮流や社会的な要請も反映し、IPO市場の裾野が広がっている」ことも1つのトピックにあげる。東証では、今後もさらなるIPO市場の広がりをけん引すると予想されるベンチャー企業への支援をどう考えているのか。同氏と滝口氏に、今後の市場展望とともに詳細を聞いた。
※TOKYO PRO Market(東京証券取引所が運営するプロ投資家向けの株式市場)への上場を含む全国のIPO社数
※下記はベンチャー通信90号(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
宇宙ベンチャーの上場などが、2023年市場のトピックに
―2023年の国内IPO市場を振り返り、どのように総括していますか。
荒井:国内のIPO社数は124社と、過去10年間で2番目に高い水準を記録しました。ウクライナ危機やインフレなどの影響から上場時期を見直す企業が増えた前年に対し、2023年は日経平均株価も好調を維持するなど、ファイナンス環境が好転したことが要因と考えられます。
滝口:2020年以降、コロナ禍や地政学リスクなど経済環境が不安定な状態が続いているにもかかわらず、国内IPO社数は4年連続で100件を上回っています。企業のIPOに対する意欲は旺盛な状況が継続しており、現在も上場準備を進める企業は相当数にのぼっているもようです。加えて、監査法人の多様化によりIPO企業の受け皿が増え、いわゆる「IPO監査難民」問題が改善に向かっていることも、この機運を後押ししているようです。こうしたことから、2024年も引き続き、国内IPO市場は底堅い状況が続くと見ています。
滝口:2020年以降、コロナ禍や地政学リスクなど経済環境が不安定な状態が続いているにもかかわらず、国内IPO社数は4年連続で100件を上回っています。企業のIPOに対する意欲は旺盛な状況が継続しており、現在も上場準備を進める企業は相当数にのぼっているもようです。加えて、監査法人の多様化によりIPO企業の受け皿が増え、いわゆる「IPO監査難民」問題が改善に向かっていることも、この機運を後押ししているようです。こうしたことから、2024年も引き続き、国内IPO市場は底堅い状況が続くと見ています。
―そのなかで、2023年のIPO市場におけるトピックはなんでしたか。
滝口:初値時価総額が1,000億円を超える大型銘柄、いわゆるユニコーン企業の上場が6件実現したことは大きなトピックでした。ファイナンス環境の好転を物語る動きといえます。また、世界でも注目されている宇宙ベンチャー企業が、日本でも2社上場されたこともトピックでした。宇宙や素材などの先端領域における研究開発型企業、通称ディープテック企業の上場審査については、日本取引所グループとして2022年12月に明確化を行い、企業特性に合わせた円滑な上場審査が可能となる対応を行っています。今回の宇宙ベンチャー2社のIPOも、そうした取り組みの1つの成果といえるかもしれません。
荒井:「インパクトIPO」もトピックの1つでした。社会的・環境的にポジティブなインパクトの創出を意図する社会課題解決型企業のIPOを指す言葉ですが、日本でも2023年に3件の上場がありました。時代の潮流や社会的な要請を反映し、IPO市場の裾野が広がっていることを物語っていると見ています。
荒井:「インパクトIPO」もトピックの1つでした。社会的・環境的にポジティブなインパクトの創出を意図する社会課題解決型企業のIPOを指す言葉ですが、日本でも2023年に3件の上場がありました。時代の潮流や社会的な要請を反映し、IPO市場の裾野が広がっていることを物語っていると見ています。
連続的なベンチャー支援を行える環境整備にも注力
―今後のIPO市場の活性化に向けて、どのような施策を進めていますか。
滝口:我々上場推進部では、国内各地域でのIPOエコシステムの確立を図る取り組みを重点的に進めています。2022年に立ち上げた「IPO経営人材育成プログラム」はその一例ですが、自治体や地域の金融機関などと連携して、各地域でIPOが継続的に生まれる土壌形成を図っています。同プログラムは仙台市を皮切りに、2023年度は大阪市、新潟市、札幌市でも行いましたが、これを2024年度もさらに拡大していく考えです。
荒井:また日本取引所グループとしては現在、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」を設置し、ベンチャー企業への資金供給など、さまざまな施策を実施しています。これらは、政府が進める「スタートアップ育成5か年計画」と歩調を合わせたものです。同計画では、非上場ベンチャー企業の資金調達環境を改善し、成長を後押ししていますが、そこで一定規模に成長した非上場ベンチャー企業のスケールアップとその後のIPO、さらにはIPO後の持続的な成長へと連続的なベンチャー企業支援を行えるような環境の整備に当グループとしても力を入れていきます。
荒井:また日本取引所グループとしては現在、「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」を設置し、ベンチャー企業への資金供給など、さまざまな施策を実施しています。これらは、政府が進める「スタートアップ育成5か年計画」と歩調を合わせたものです。同計画では、非上場ベンチャー企業の資金調達環境を改善し、成長を後押ししていますが、そこで一定規模に成長した非上場ベンチャー企業のスケールアップとその後のIPO、さらにはIPO後の持続的な成長へと連続的なベンチャー企業支援を行えるような環境の整備に当グループとしても力を入れていきます。
―今後、IPOに関心をもつ企業をどのように支援していきますか。
滝口:日本には数百万社の企業があるといわれますが、IPOを果たすのは毎年わずか100社程度に過ぎません。そこに挑戦するステージにまで企業を成長させた尊敬すべき経営者のみなさんが、よいタイミングでIPOを実現できる環境を整えていくことこそ、我々の責務だと考えています。その意味では、先ほどの各種施策と同時に、IPO後の企業に求められる「株主との対話」や「社会的責任の遵守」、「サステナビリティ」といった「IPOリテラシー」を高めてもらう取り組みにも力を入れ、成長企業のIPOを後押ししていきます。
荒井:IPOは経営者にとって大きな節目ではありますが、あくまで通過点であり、もっとも重要なことはIPOを機にいかに成長するかです。IPOを目指す成長企業の経営者のみなさんには、IPOによって大幅に増えるであろう多様なステークホルダーとの対話を通じて、より企業を進化させ、次代の日本経済を担う存在になっていただきたいと期待しています。
荒井:IPOは経営者にとって大きな節目ではありますが、あくまで通過点であり、もっとも重要なことはIPOを機にいかに成長するかです。IPOを目指す成長企業の経営者のみなさんには、IPOによって大幅に増えるであろう多様なステークホルダーとの対話を通じて、より企業を進化させ、次代の日本経済を担う存在になっていただきたいと期待しています。
PROFILE
プロフィール
荒井 啓祐(あらい けいすけ)プロフィール
1994年、東京証券取引所(現:株式会社東京証券取引所)に入所。TOKYO AIM(現:TOKYO PRO Market)の設立業務やロンドン駐在を経て、2019年より情報サービス部長として株価指数の企画開発などを担当。2023年4月より現職。
滝口 圭佑(たきぐち けいすけ)プロフィール
2009年、株式会社東京証券取引所入所。デリバティブ取引市場の運営や上場会社サポート業務を経て、2015年より上場審査部にて国内企業やREITなどの上場審査業務に従事。2020年7月より現職。
企業情報
設立 | 1949年4月 |
---|---|
資本金 | 115億円 |
従業員数 | 312名(2023年3月31日現在) |
事業内容 | 有価証券の売買を行うための市場施設の提供、相場の公表および有価証券の売買の公正の確保、その他の取引所金融商品市場の開設にかかる業務など |
URL | https://www.jpx.co.jp/ |
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