INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
画期的サービスを生み出し続ける稀代のベンチャー経営者が描く未来図
「くふう」のサービスで生活を満たし、目指すは「KUFU」が国際語になる世界
株式会社くふうカンパニー 取締役兼代表執行役 穐田 誉輝
Sponsored 株式会社くふうカンパニー
商品価格比較サイト『価格.com』、グルメレビューサイト『食べログ』、料理レシピ検索サイト『クックパッド』―。それぞれの分野を席巻した誰もが知るWebサービスを世に送り出し、複数の企業を上場に導いてきた穐田誉輝氏。現在、率いるくふうカンパニーでも、買い物や家計簿、住まい、結婚といった領域の情報サービスで、生活者に新たな「便利」を提案し続けている。これら画期的なサービスを次々と生み出せる秘密とは一体なにか。また、この先に描く成長ビジョンとは。同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信91号(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
「ユーザーファーストの徹底」が、ビジネスにつながる現実を知る
―足元の事業状況を説明してください。
ここ1年ほどは、グループ内での事業再編に着手しているところです。設立以来、買収や合併を重ね、急速に企業規模を大きくしてきましたが、その過程でさまざまなサービスが乱立し、事業や組織において重複やムダが生じてきたのも事実です。足りない部分を補いながらムダをそぎ落とし、より筋肉質な体制へと組織を見直しているところです。また、「ユーザーファースト」の観点から、より使いやすく、より便利なサービスの仕組みを追求する必要があると考えています。たとえば当社では、買い物や家計簿、住まい、結婚などさまざまな領域でサービスを提供していますが、それぞれのサービスで蓄積されるユーザーデータを集約し、今後はより付加価値の高い「くふう」ブランドのサービスとして展開していくことを考えています。
―「ユーザーファースト」は、穐田さんが頻繁に使うキーワードですね。
ええ。日本にインターネットが普及したこの30年で、情報伝達のあり方が大きく変わり、それに伴って人々の生活も変わりました。その間、『価格.com』や『食べログ』、『クックパッド』といったサービスを世に送り出す中で、私にとってこの30年の意味は、「ユーザーファーストの徹底がビジネスにつながる」という「現実」を実感したことだと思っています。「ユーザーファーストの徹底」は、短期的には利益を出しにくく見えますが、ライフタイムバリューを稼ぐには、もっとも合理的な方法です。その現実は現在も変わっていないので、ユーザーファーストが我々の生き残り戦略の根幹であり、優位性の源になり続けています。逆に言えば、市場にはユーザーファーストを徹底していない会社が多いということかもしれません。
期待のAIが「邪悪さ」を排除するツールに
―穐田さんは、ユーザーファーストをどのように「定義」しているのですか。
まずは、「自分が使いたいと思うか」、次に「自分の大切な人に自発的に勧めたいと思うか」、この2つが明確な基準です。この2つは、相当に高いハードルではありますが、最優先テーマだと常日頃からブレることなく社内には伝えています。
とはいえ、ビジネスの現場では短期的にユーザーファーストから多少ズレるほうが数字が上がることはあります。ダークウェブや行き過ぎたSEOなどはその一例ですし、現在はグレーゾーンとされるハック行為などは、数字を背負う立場なら手を出す欲望に駆られるのも理解できないことではありません。成長を追い求めるベンチャー企業ならなおさら、ハック行為を「邪悪」と見るか、「経営手法の1つ」と見るかの判断は難しいものです。私自身は「ユーザーに不利益があるなら絶対にやるべきではない」と思っており、それを社内で貫徹する「文化」を醸成していますが、いまも試行錯誤が続いています。そこに対して、近年登場したAIは、そうした「邪悪さ」を排除するツールになりうるという期待感を持っています。AIには、粗利の高い商品を売って販売成績を上げようとするインセンティブは働かないですし、純粋に客観的なデータをもとにユーザーファーストを追求してくれます。当社のサービスにおいても、AI活用を重点テーマとしているのは、そのためでもあります。
とはいえ、ビジネスの現場では短期的にユーザーファーストから多少ズレるほうが数字が上がることはあります。ダークウェブや行き過ぎたSEOなどはその一例ですし、現在はグレーゾーンとされるハック行為などは、数字を背負う立場なら手を出す欲望に駆られるのも理解できないことではありません。成長を追い求めるベンチャー企業ならなおさら、ハック行為を「邪悪」と見るか、「経営手法の1つ」と見るかの判断は難しいものです。私自身は「ユーザーに不利益があるなら絶対にやるべきではない」と思っており、それを社内で貫徹する「文化」を醸成していますが、いまも試行錯誤が続いています。そこに対して、近年登場したAIは、そうした「邪悪さ」を排除するツールになりうるという期待感を持っています。AIには、粗利の高い商品を売って販売成績を上げようとするインセンティブは働かないですし、純粋に客観的なデータをもとにユーザーファーストを追求してくれます。当社のサービスにおいても、AI活用を重点テーマとしているのは、そのためでもあります。
ビジネスの最大の敵は「飽き」。情報仲介業に勝機を見出す
―穐田さんはこれまで、どのような発想によっていくつもの画期的なサービスを世に送り出してきたのですか。
大学卒業後、最初に入社したベンチャーキャピタルにおいて、担当となった小売り・サービス業を分析した私は、あることに気づきました。それは、どんなに成長している業種業態も、ある一定期間後、急速に業績を落としてしまう事実でした。当時、急速に発展していたロードサイドビジネスでその傾向が顕著でしたが、さらに調べていくと、その原因の1つがお客さんに飽きられていることだとわかったのです。同時に、自分たちも商売に飽きている。「商いは飽きない」とはよく言ったもので、この最大の敵である「飽き」を回避するにはどうすればいいか。私なりの答えは、「情報を常に新しくすること」でした。同時に、各社が業績の浮沈を繰り返し、新陳代謝が進む市場において、その情報を仲介する立場が一番有利になると考えたのです。
―『価格.com』や『食べログ』を世に送り出した際にも、その発想があったと。
そうです。情報の仲介業であれば、データが溜まるほど精度が上がり、優位性が高まります。付加価値も上がりますので、提案力も高められます。こうしてより便利が生まれるほど、逆に「不便」もまた顕在化してきます。情報仲介の世界では、お客さんの「不便」を実感できることはむしろ望ましいことです。その不便を解消すれば、みんなが喜んでくれますし、競合に勝ちやすくもなるわけですから。これまでは、この仮説のとおりに現実が進んでいると思っています。『価格.com』や『食べログ』、『クックパッド』もこうしてサービスとして洗練していきました。
―その「不便」をキャッチする感度こそ、「ユーザーファースト」なのですね。
そのとおりです。じつはこの経験の中で気づいた重要なことが、もう1つあります。それは「人材の力」、さらにいえば「起業家精神や経営者マインドを持った人材」の重要性でした。
―詳しく教えてください。
ベンチャーキャピタル時代を含め、かつてともに働いていた何人もの人材が現在、起業家になったり、上場企業の代表や経営者になったりしています。振り返れば、その時々で事業をけん引してきたのは、こうした人材にほかなりませんでした。この過去の実体験の中で、経営者人材の輩出をもっと加速させれば、もっといいサービスを生み出せたはずという感覚が私にはありました。言い換えれば、起業家マインドを持った人材をどれだけ抱えるかが企業の価値につながるということです。当社で現在、「経営者候補採用」という制度を実施しているのは、そうした背景があります。
私は、起業家には2つのタイプがあると思っていて、一方は誰になにを言われようが、自身の想いで事業を始めてしまうタイプ。もう一方は、能力が高く、起業に興味もあるが、事業テーマの設定が不透明であったり、起業前にチームを率いる経験をしてみたいと思っていたりするタイプです。後者の場合、いちど会社員を経験してみるのもよい選択だと思います。その経験をもとに、その会社で社長を目指すのもいいし、起業家やプロ経営者を目指すのもいい。もっと相応しい別の選択肢が生まれる可能性もあります。当社の「経営者候補採用」では、経営を知る機会や環境を与え、3年を目安に自らの将来を見定めてもらう仕組みをつくろうとしています。
私は、起業家には2つのタイプがあると思っていて、一方は誰になにを言われようが、自身の想いで事業を始めてしまうタイプ。もう一方は、能力が高く、起業に興味もあるが、事業テーマの設定が不透明であったり、起業前にチームを率いる経験をしてみたいと思っていたりするタイプです。後者の場合、いちど会社員を経験してみるのもよい選択だと思います。その経験をもとに、その会社で社長を目指すのもいいし、起業家やプロ経営者を目指すのもいい。もっと相応しい別の選択肢が生まれる可能性もあります。当社の「経営者候補採用」では、経営を知る機会や環境を与え、3年を目安に自らの将来を見定めてもらう仕組みをつくろうとしています。
目指す「行動の最適化」は、まだどの企業も実現していない
―最後に、くふうカンパニーとしての今後の成長ビジョンを聞かせてください。
冒頭に、グループ内での事業再編とより付加価値の高い「くふう」ブランドのサービス構想をお話ししましたが、その先に当社が目指すのは、「毎日の暮らし」から「ライフイベント」まで、あらゆる場面で当社のサービスが利便性を提供し、人々の生活の満足度を高めていく未来です。日本のサービス業のレベルは相対的に高いので、日本で勝てるサービスならば世界で十分に通用しますし、サービス業はノンバーバルな要素が強いので言葉の壁も乗り越えられるはずです。今後、AIを活用していけば、過去の行動データから人々の志向に対して最適なサービスをAIが見出し、提案できる世の中が必ず実現すると考えています。これまで、データベースとAIを活用して、Googleは人々に訴求する「最適な広告」を提案し、Amazonは「次に何を買うか」を提案してきましたが、当社が提案したいのは、「次にどんな行動をとるべきか」、いわば「行動の最適化」です。まだどの企業も実現できていないこの理想を実現できたとき、「くふう=KUFU」はおそらく国際語になっているに違いありません。私が社名に「くふう」を冠したのは、そんな未来を描いたからなのです。
PROFILE
プロフィール
穐田 誉輝(あきた よしてる)プロフィール
1969年、千葉県生まれ。慶應義塾大学大学院修了。ジャフコ グループ株式会社、株式会社カーチスホールディングスを経て、1999年に株式会社アイシーピーを設立し、代表取締役に就任。その後、株式会社カカクコム代表取締役、クックパッド株式会社代表執行役、株式会社トクバイ(現:株式会社ロコガイド)代表取締役などを経て、2018年に株式会社くふうカンパニーを設立し、取締役会長に就任。2021年には株式会社ロコガイドと株式会社くふうカンパニーの共同株式移転により、現在の株式会社くふうカンパニーが設立され、取締役兼代表執行役CEOに就任。
企業情報
設立 | 2016年7月 |
---|---|
資本金 | 3,000万円(2024年6月現在) |
売上高 | 204億8,600万円(2023年9月期) |
従業員数 | 688名(2023年9月時点:連結) |
事業内容 | 買い物・家計簿・住まい・結婚など、「毎日の暮らし」や「ライフイベント」の領域において、生活者であるユーザーにとっての利便性や豊かさを最優先に考えたサービスを提供 |
URL | https://kufu.company/ |
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