INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
東京の「稼ぐ力」を後押しする「東京都中小企業振興公社」
「競争力強化」に資する助成金で、中小・ベンチャー企業の成長を支える
公益財団法人東京都中小企業振興公社 企画管理部 設備支援課
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前ページで紹介した「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、その目的に企業の競争力強化が謳われている。中小・ベンチャー企業にも大きく間口が開かれていることから、令和3年度の事業発足以降、多くの成功事例を生んでいる。ここでは、同支援事業を活用して競争力強化を果たした2社の事例を紹介する。
※下記はベンチャー通信91号(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍が直撃する中で、迫られた製造ラインの刷新
―事業内容を教えてください。
当社は、明治43年に高級果物店としてスタートしました。現在は、高級果物店のほかに、高級フルーツを使ったフルーツパーラー事業や雑貨販売事業、焼き菓子などの製造販売を手がける製菓事業が主力です。このうち、焼き菓子は有名ホテルなどのOEM生産を行っています。長年の研究開発の末に辿りついた独自の製造方法によって、他社には真似できない特徴ある味や食感を実現しており、看板商品の1つです。一方で、独自の製造ラインは老朽化が進み、消費電力の大きさや ナ禍で飲食事業が大きな打撃を受けていた時期でもあり、難しい経営判断が迫られていました。
―今回、どのような経緯で助成金の活用に至ったのですか。
資金調達を模索する中で、金融機関を通じて知ったのが「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」でした。助成額が最大1億円、助成率は事業費の最大4分の3という条件はほかには見当たらず、申請条件の間口の広さも含めて大変に魅力的でした。当社は令和4年度の第4回募集に応募することにしましたが、採択への関門は相当に狭いと覚悟していました。しかし、事業費の4分の3にあたる約4,000万円の助成を受けることができました。設備刷新による省力化や生産性向上、フードロス削減などの大幅な改善効果を見込んだ事業計画を評価していただいたのだと思います。
―助成金の活用効果はいかがですか。
導入した新たな製造ラインでは、時間あたりの生産量は30%向上しながら、消費電力は逆に20%程度抑制し、製造工程全体で70%の省力化を実現しています。また、製造ラインが省力化されたおかげで、人員を商品開発に充てることができるようになり、その成果が早速、新商品というかたちで生まれています。さらに、今回の製造ライン刷新をきっかけに、賞味期限を延長させる瞬間冷凍設備や包装設備の導入ができ、こうした思い切った投資判断は、助成金だからこそできたと思っています。今後は検品工程へのAI活用など、製造プロセス全体の革新にも着手できるようになります。
量産研究の効率的進展には、多くの装置を整備する必要が
―事業内容を教えてください。
人工光型植物工場の企画・運営を行っています。我々が手がける植物工場の特徴は、個々の装置が完全密閉型である点です。従来の植物工場は、栽培室自体は密閉されているものの、その空間内で多段の栽培棚が開放されている「オープン型」が一般的です。ここでは、環境制御が難しいため収穫量や品質が安定せず、多品種の生産もできないのが課題でした。これに対して、当社が開発するのは、栽培室に対して装置自体も密閉された「閉鎖式」の植物工場です。環境制御性を格段に高められ、水温、気温、湿度など約20種類もの環境条件を精密にコントロールできます。その結果、装置単位で環境を制御できるため、同じ栽培室内で多品種の植物を育てることができ、装置ごとに環境条件を調整して植物の食味や成分を変えることも可能です。
―今回、どのような経緯で助成金の活用に至ったのでしょう。
当社ではすでに、レタスを中心とした葉物野菜を生産する技術を工場に実装していますが、同時に研究事業として、植物工場における生産品種を広げるための栽培研究を事業パートナーとともに推進しています。栽培研究は1つのテーマでも、複数の栽培装置を並行して使用することで研究の効率を高めることができます。研究事業を拡大するうえで、できるだけ多くの装置を一度に整備する必要がありました。とはいえ、装置は高額なため、資金調達を模索していたところ、ベンチャーキャピタルに紹介されたのが、「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」でした。
量産設備投資に充当できる大規模助成制度はめずらしい
―支援事業に対して、どのような感想を持ちましたか。
これまでいくつかの助成金を活用してきた経緯はありますが、研究開発に対する助成が多く、量産目的の設備投資に充当でき、しかも助成額が最大1億円という規模は非常にめずらしい事業だと感じました。そのうえ、助成率が事業費の最大4分の3という条件は大変魅力的でした。当社では令和4年度の第3回募集に申請したところ、約7,800万円の助成をいただきました。事業の先進性や資源の有効活用によるゼロエミッションへの貢献という観点が評価されたのだと思います。これにより、十数台の装置を増強しました。その後の拡張も経て、現在は32台体制となっています。申請段階では、従来の研究開発型の助成金ではあまり例のない「見積書の提出」を求められましたが、このおかげで投資計画をあらためて緻密に練り直し、その後の設備増強をスムーズに実行することができました。
―助成金の活用は、今後どのような効果をもたらしますか。
将来の食料安全保障の観点もあり、現在は葉物以外の野菜や果物、さらには穀物などの栽培研究にも着手していますが、これらの量産研究や受託研究を大きく加速させるものと期待しています。「2050年には世界で現在の1.7倍に相当する食料が必要」と言われています。食料自給率が低い日本からこうしたキーテクノロジーが提案されることは、大きな意義があると自負しています。
PROFILE
プロフィール
公益財団法人東京都中小企業振興公社
設立 | 1966年7月 |
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基本財産 | 5億5,658万円 |
従業員数 | 635名 (うち固有職員223名) |
事業内容 | 東京都内の中小企業に対する各種支援事業 |
URL | https://www.tokyo-kosha.or.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-3251-7884(平日 9:00~17:00) |
お問い合わせURL | https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/yakushin.html |
株式会社渋谷西村總本店 企業情報
創業 | 1910年1月 |
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資本金 | 1,000万円 |
事業内容 | 特選果実の販売、フルーツパーラー、菓子製造販売、雑貨販売 |
URL | https://snfruits.com/ |
株式会社プランテックス 企業情報
設立 | 2014年6月 |
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資本金 | 6,001万円 |
事業内容 | 人工光型植物工場の企画・設立・運営サポート、植物の栽培条件に関する研究、植物の生産・販売 |
URL | https://www.plantx.co.jp/ |
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