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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社WonderPalette 代表取締役CEO 尾上 寿明

革新的な商品需給モデルの構築に挑む若き起業家の大志

生成AIによる高精度な需要予測で、持続可能な食品産業の未来を創る

株式会社WonderPalette 代表取締役CEO 尾上 寿明

「東京土産」として国内外で愛される『東京ばな奈』を生んだグレープストーン。近年は、土産物店だけでなく、スーパーやコンビニでも展開し、業界でも屈指の流通量を誇る。そうしたなか、コロナ禍で大打撃を受けた同社は、多様な業務課題を改善するため、2024年よりWonderPaletteにAIコンサルティングを依頼。需要予測を皮切りに全社的なAI活用を進めているという。その具体的な成果や展望を、WonderPaletteでCOOを務める麻生氏も交えて聞いた。
※下記はベンチャー通信91号(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

需要予測の精度アップが、多様な問題解決のカギ

―グレープストーン社が、需要予測の課題解決をWonderPalette社に依頼した経緯を教えてください。

宮澤:私たちは1978年の創業以来、「価値創造企業」を理念に掲げ、社員がもつ創造性を最大限に発揮して活動を続けてきました。そうした理念をもとにお菓子の開発を続け、『東京ばな奈』『シュガーバターの木』などの代表作も生まれました。しかし、昨今のコロナ禍によりお土産業界全体が低迷し、私たちも業務の再構築を図らざるを得なくなりました。すべての業務の洗い出しを行ったところ、需要予測の精度を上げることで多くの領域において業務改善を図れることがわかりました。需要予測は、原料の調達から売り場展開、現場の人員管理などの企業活動を支える羅針盤であり、時間的にも人的にもコストを割いてきた領域です。どうすれば効率的かつ精度改善を図れるか検討していたとき、先代社長が退任直前に「これからはAIの時代。AIを活用して課題解決を図ろう」と号令を発したことで、当社ではまず、大きな課題として浮き彫りになった需要予測の領域で、AI活用の道を探ることになったのです。

―なぜ、WonderPalette社を選んだのでしょうか。

宮澤:複数のシステム会社から話を聞きましたが、難しいシステム用語を聞かされるばかりで、当社が求める需要予測になるのか確信がもてませんでした。そんな折、尾上さんに出会い、当社の課題を打ち明けたところ、「その課題ならAIをこう活用すればいい」「こういう方法を使えば短期間で改善できる」など、具体的な事例を交えて、AIの素人である私でも成功をイメージできるようなお話をいただいたんです。これなら「実現できる」と思い、WonderPalette社への依頼を決めました。

麻生:そうでしたね。グレープストーン社には、最初に1日ごとの需要予測を出したときの数値を検証して、提案しました。当社では必ず根拠のある数字を用いて説明し、AIの知識がなくても導入の効果がわかる具体性を伴った提案を心がけています。

―『Wonder予測AI』の導入後、需要予測は改善できましたか。

宮澤:試作から約半年が経ちますが、従前よりも需要予測の精度が高まっています。人の力では解析が困難であった膨大な過去データから導き出された需要予測値により誤差の範囲が非常に小さくなりました。当社は「お客様の満足」を最優先に考え、賞味期限を通常よりも早く設定している関係から、需要予測のブレは、商品の品切れや廃棄などによる機会損失につながりかねません。その点、『Wonder予測AI』は、店舗ごと、SKUごとの細かい数値を高い精度で出せるので、効率的な販売につながっています。こうした成果は、技術力の高さだけでなく、WonderPalette社の地道で丁寧な仕事ぶりが生んだのだと考えています。

AIの学習領域を拡大して、人間のアイデア力を伸ばす

―どのような仕事ぶりを評価しているのでしょうか。

宮澤:店舗や会議などの現場に入り、需要予測の担当者にヒアリングを繰り返しながら、すでに以前よりも精度が高いのにもかかわらず、今もさらなる向上に努めてくれているところです。こうした地道な努力を間近で見せられると、私たちとしても「このプロジェクトを絶対に成功させる」というモチベーションが沸々と湧いてくるものです。WonderPalette社は、単にシステムを提供するだけの会社ではなく、企業の理念や価値を大事にしながら課題に取り組んでくれる会社なのだと実感しています。今後は需要予測だけではなく、当社のあらゆる領域で力を貸してほしいと考えています。

―たとえば、どのような領域でしょう。

宮澤:当社の理念である「価値創造」の領域です。当社では、WonderPalette社の指導のもと、全社的に生成AIを導入し、需要予測だけでなく、企画や営業など、人の意思が介在する領域でもデータ学習を進めています。こうした取り組みを行うことで、AIがこれまでバラバラになっていた業務の「点」をつなぎ、「線」にしてくれることで、当社が創業以来育んできた創造力を、さらに大きく成長させてくれるのではないかと期待しています。いずれ、まったく新しい販売戦略や新商品のアイデアが生まれるのではないかと今からワクワクしていますよ。

麻生:いわゆる「ゼロイチ」と呼ばれる創造力の世界は、やはり人間のインスピレーションが不可欠です。しかし、AIをうまく活用することで、人間のアイデアやインスピレーションを促進することは可能だと思っています。私たち自身も日々AIの活用法を学びつつ、多くの企業の新たな「価値創造」に貢献をしていきたいですね。
PROFILE プロフィール
尾上 寿明(おのうえ としあき)プロフィール
1997年、岐阜県出身。2016年に法政大学に入学後、在学中に株式会社Rainを創業。その後2社のITスタートアップにて従事したのち、2024年より現職。おもに事業開発、要件定義、人材採用を担う。
麻生 哲郎(あそう てつろう)プロフィール
1997年、秋田県湯沢市出身。2017年に東北大学に入学後、在学中に株式会社Lilyを創業。卒業後、DJI JAPAN株式会社を経て、2024年より現職。おもに事業開発を担う。
宮澤 厚(みやさわ あつし)プロフィール
1968年、山形県米沢市出身。1991年に新潟大学を卒業後、株式会社ダイエーに入社。経営管理部長、営業企画部長を歴任後、2016年、株式会社グレープストーンに入社。2023年より現職。おもに経営管理および業務改革を担う。
株式会社WonderPalette 企業情報
設立 2024年1月
資本金 2,105万円
従業員数 19名
事業内容 AI需要予測SaaS『Wonder予測AI』の開発および運営、食品業界向けDXコンサル、生成AI導入支援
URL https://wonder-palette.com/
株式会社グレープストーン 企業情報
設立 1978年7月
資本金 1億円
売上高 329億円 (2023年7月期)
従業員数 900名 (2023年7月時点)
事業内容 菓子の製造および販売
URL https://www.grapestone.co.jp/
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