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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

センス・トラスト株式会社 代表取締役社長 今中 康仁

不動産で感動の連鎖を生み出し、ピースフルな社会を築きたい

センス・トラスト株式会社 代表取締役社長 今中 康仁

2019年に大阪で創業し、不動産中古物件の再生や開発を手がけるセンス・トラスト。設立から7期目を迎えたいま、売上高、拠点数、手がける事業の範囲、そのいずれも急成長を遂げている。同社代表の今中氏によると、成長の原動力は「唯一無二の感動を届ける」という理念にあるという。その理念の背景にある原体験や、理念の実現によって目指すビジョンについて、同氏に詳しく聞いた。
※下記はベンチャー通信93号(2025年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

前向きで人に優しくなれる「感動」という特別な感情

――事業内容を教えてください。

 当社の事業は、大きく3つの柱から成り立っています。まずは不動産の買取再生事業です。中古物件を取得してリノベーションや修繕を施し、価値を高めたうえでお客さまにお届けするというものです。2つ目は収益不動産事業です。自社で収益不動産を取得し、こちらも同様にバリューアップをかけた上で再び市場に提供する。単なる転売ではなく、「価値を加える」という点を大事にしています。そして3つ目がディベロップメント事業。土地を取得し、そこから新たにマンションやビルを建てて供給する、いわゆる開発事業で、『センス・レジデンス』などのブランドで展開しています。

 創業当初は不動産売買の仲介事業からスタートしましたが、同事業はいまでは売上全体の5%に満たない程度になっています。それだけ、手がける事業が広がってきたと言えるでしょう。そしてそれに伴い、会社の規模も成長してきました。

――具体的に、どういった成長を遂げていますか。

 たとえば、第5期となる2024年3月期の売上高が77億円だったのに対して、直近の第6期は262億円となり、わずか1年でおよそ3倍の規模に成長しました。大阪で始めた会社も、京都、東京、神戸、横浜と拠点を広げ、今年の10月には名古屋と福岡にも新しいオフィスをオープンする予定です。本社オフィスも、今年7月に大阪の一等地「うめきた」に新しく開業した複合ビル「グラングリーン大阪」に移転しました。まちのランドマークのような場所に拠点を構えられたのは、私たちの成長を象徴する出来事だと思っています。

――好調な成長の要因はなんだと分析していますか。

 まずは、時流を的確に掴んできたことだと思っています。創業した直後にコロナ禍に見舞われ、大きな環境変化がありましたが、その後の不動産市況はむしろ追い風になりました。とはいえ、流れに乗るだけでは簡単に沈んでしまうのがこの業界です。エリアごとの相場動向や、どのセグメントが伸びるのかといったトレンドの目利きを外さないようにすること。これが非常に重要でしたし、その判断を間違えなかったことが大きかったと思います。もうひとつは、データドリブンの徹底です。不動産業界は経験や勘に頼りがちな部分が多いですが、私たちは仕入れから販売、アフターまでの全工程でデータを分析し、判断の裏付けにしています。経験だけではなく、数字で納得できる精度の高さが、成長を加速させたと思います。

 ただし、本質的な成長要因はやはり「人」です。すべては社員によるものだと断言できます。

――社員を育成するにあたって大切にしていることはなんでしょう。

 私は社員を「家族」同様だと考えています。思っていることは取り繕わず素直に伝えますし、本気でぶつかります。社員は単なる組織の一員ではなく、人生を共にする仲間です。その想いを言葉として掲げているのが「社員ファースト」です。社員が幸せであってこそ、お客さまを本当に幸せにできるからです。同時に、取引においては誠実さを徹底しています。私は社員に「相手が悲しむような売上は絶対に立てるな」と伝えています。契約上は正しくても、お客さまが納得していなければ意味がありません。誠実さや感謝を忘れず、人に感情を込めて向き合うこと。それがそのままお客さまに伝わり、結果として会社の成長にもつながっていく。だからこそ会社としても、「感動」という言葉を理念のど真ん中に置いてきました。

――「感動」という言葉は、今中さんにとってどんな意味を持つのでしょう。

 この言葉は創業前から私の中にあり、ホームページを初めてつくったときも「唯一無二の、感動を」というフレーズを真っ先に掲げました。そこまで感動にこだわる理由は、私自身の原体験にあります。私は学生時代、ずっと野球に打ち込み、プロを目指していました。甲子園で日本一を経験するチームの一員だったのですが、怪我をしてしまって試合には出られず、スタンドから仲間の姿を見守ることになったんです。本来なら自分が立っていたかもしれない場所に仲間が立ち、歓喜の瞬間を迎える。その光景を見て、悔しさをはるかに超える「強烈な感動」を味わいました。あのときの気持ちは一生忘れないと思いますし、いまでも夢に見るくらい鮮烈に残っています。だから私にとって「感動」というのは特別なものなのです。そして、感動している瞬間というのは、誰もがポジティブで、人に優しくなれる。「ピースフル」な状態なんですよね。感動が広がれば争いや負の感情もなくなっていく。だから人は感動を求めて生きているし、感動できなければどれだけお金を稼いでも意味がないと思っているのです。

社会を支える不動産を再生し、次世代へ価値をつなぐ

――不動産という事業と「感動」はどのようにつながると考えていますか。

 不動産こそ感動を届けられる事業だと思っています。たとえば、家に入った瞬間の「わぁ、素敵だな」という体験や、間取りやデザインに触れたときの気づき。そうした小さな驚きや喜びの積み重ねが、大きな感動になります。つまり不動産の購入は、ただ住まいや空間を手に入れるだけでなく、安心や信頼、そして「この会社から買ってよかった」という納得感まで含めての体験なんです。そのため私たちは、建物のハード面だけでなく、つくり手の想いや、物件がもつストーリーといったソフト面も含めて届けることを大事にしています。それに、不動産は社会そのものを支える「器」であり、あらゆる産業もまずは空間があってこそ成り立ちます。既存の不動産を再生し次世代へつなぐことも、その器を守る大切な役割です。限られた国土や文化を大切にしながら、より感動できるものへ高めていくことが私たちの責任だと考えています。

 そして感動は、社外に届けるだけでなく社内でも育まれるものだと思っています。

――どういうことでしょう。

 オフィスが広くなったり、拠点が増えたりすることは、「自分たちの仕事が前に進んでいる」と社員が感じられる大切な瞬間です。直近では、今年7月の「グラングリーン大阪」への本社移転がその象徴で、社員にとっても会社の成長を誇りに思える出来事だったと思いますし、私自身も胸が熱くなりました。

 入社説明会のときなどは特にそうで、創業時の想いや、社員に与えるこれからの役割を伝えた最後に「仲間になってくれてありがとう」と話すと、私は胸が熱くなって涙が出てしまうんです。社員にとっても、「この会社は感謝や感動を大事にする場所なんだ」と感じてもらえる瞬間になっているはずです。だから結局、私の感動というよりも、社員と一緒に分かち合う感動なんです。それがセンス・トラストという会社の文化になっていると思っています。

世の中に開かれた会社として、業界日本一を目指す

――次は、社員にどのような感動を与えていきたいですか。

 これからは、もっと大きな舞台で感動を届けていきたいと思っています。日本を代表する不動産会社になることと、世界に挑戦していくことです。そのために必要で、直近の目標として掲げているのがIPOです。IPOはゴールではなく、一つの通過点ではありますが、上場することで、会社には世の中からの監視が入り、会社の健全性や透明性が保たれますし、資金調達の幅も事業のフィールドも広がっていくでしょう。私自身、オーナー企業のままであることにこだわりはなく、むしろ世の中に開かれた存在になることが重要だと考えています。そうしてこそ初めて、多くの人に「唯一無二の感動」を届け続けられると思っています。

――IPOの先に描いているビジョンを聞かせてください。

 不動産業界の見られ方を変えることです。日本では「わかりにくい契約」や「強引な営業」といったイメージから、どうしても「グレーな業界」と思われがちです。だからこそ私たちは誠実に、そして感動を提供することで、「不動産は人を幸せにする産業だ」と胸を張れるようにしたいです。日本一を目指す以上、売上や時価総額といった指標でも結果を出しますが、それは誰かを蹴落として勝つことではありません。共存共栄しながら、称え合えるピースフルな世界を実現するために一番を目指すのです。妬みや僻みといった感情は社会に不要だと思います。感動にはそれを溶かし、人を前向きにする力があると信じています。だからこそIPOを経て事業規模を広げ、感動をより多くの人に届け、その連鎖でピースフルな社会を実現することを願っています。

――これからキャリアを築こうとしている若い読者へメッセージをお願いします。

 いまのセンス・トラストは、まさに成長の真っ只中にあります。事業が拡大し、仲間の数もどんどん増えています。私たちは今後、より多くのお客さまに「唯一無二の感動」を届け、業界や社会をピースフルなものに変えていくという大きな挑戦をしていきます。だからこそ、ここで働くことは「単に不動産の仕事をすること」ではありません。一緒に夢を描き、仲間と感動を分かち合い、その連鎖で社会を少しでも良くしていく。そうした経験ができる場所だと思っています。若いみなさんには、ぜひ「感動を大切にする心」を持ってほしいです。その想いを、一緒に形にしていける仲間になってくれるとうれしいですね。


センス・トラスト株式会社
取締役副社長
小松 圭介
副社長として、グループ全体の売上責任を担っています。2019年に参画する前は大手不動産会社で全国トップの営業成績を残しましたが、最初は契約が取れず死ぬ気で働き抜いた経験があります。そこで身につけたのは、顧客の期待をつかみ誠実に寄り添い感謝と感動を生む姿勢でした。いまはその営業力を社員に広げることで、「唯一無二の、感動を」という理念を体現するのが私のミッションです。恐れず挑戦し本気で働けるかたは、ぜひ当社の仲間に加わってください。顧客の感動をつくるやりがいが、ここにはあります。

センス・トラスト株式会社
取締役CFO
山下 竜一郎
監査法人での経験を活かし、創業当初から経理・財務に加え、労務や法務、広報まで幅広く統括しています。社員の6割がコーポレートという当社の体制は不動産業界でも異例で、創業当初からIPOを視野に基盤づくりを進めてきました。IPOで得た資金はAIを活用した不動産の新しい仕組みづくりや、M&Aに投じることで、業界を前進させる原動力になります。私が異業種のセンス・トラストに参画したきっかけは社長の「日本を良くしたい」という想いでした。その志に共感できるかたは、ぜひ当社で一緒に挑戦しましょう。
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