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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

次世代監査法人IPOフォーラム 代表 / 史彩監査法人 代表社員 伊藤 肇

「監査難民問題」へ果敢に挑む「次世代監査法人IPOフォーラム」

IPO監査の新たな「受け皿」として、市場関係者からの注目度高まる

次世代監査法人IPOフォーラム 代表 / 史彩監査法人 代表社員 伊藤 肇

※下記はベンチャー通信90号(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 約43%のIPO準備企業が、監査法人の確保に苦戦している―。マーケティング事業などを手がけるオロの調査(※)で判明した「IPO監査難民問題」の実態だ。IPO準備企業が監査法人と監査契約を結べず、場合によってはIPOを断念せざるを得なくなる、いわゆる「IPO監査難民問題」。事業の採算性を重視し、大手監査法人がIPO監査契約を控える傾向にあることがおもな原因とされる。そのぶん、大手以外の監査法人が受け皿となるケースはあるものの、高度な専門知識を要するIPO監査に精通した人材の不足は深刻だという。

 そうしたなか、IPO市場関係者からの注目度が高まっている団体がある。IPO監査への強い意気込みを持つ中小監査法人が結集した「次世代監査法人IPOフォーラム」だ。主要メンバーは5つの監査法人(下図)で、各法人とも大手監査法人で豊富なIPO監査実績を積んだ会計士が多く在籍しているという。前掲のオロの調査では、同団体の「名前を聞いたことがある」と答えた割合は約66%にのぼり、認知度の高まり具合がうかがえる。長年、IPO監査に取り組んできたプロネット代表の高橋 廣司氏も、「資本市場の持続的発展に貢献する団体」と評価する。また、東京証券取引所上場推進部課長の滝口 圭佑氏は、「株式市場の健全な発展のためにもIPO企業の安定的な創出は必須。IPO企業創出を支えるこうした監査法人の取り組みには期待している」と述べている。
※「監査難民」問題に関する実態調査。2022年7月に実施

IPO監査の「受け皿」となるべく、中小監査法人の有志らで設立された「次世代監査法人IPOフォーラム」。多くのIPO市場関係者から、「IPO監査難民問題」の解決に向けた同団体の取り組みに期待が寄せられている。そうした期待を背に、同団体ではどのような方針でどういった取り組みを行っているのか。代表の伊藤氏に、設立にいたった経緯とともに詳しく聞いた。

金融庁も必要性を指摘する、IPO監査の「新たな担い手」

―「次世代監査法人IPОフォーラム」とはどのような団体ですか。

 IPO監査のボトムアップを推進している中小監査法人が集まった団体です。設立は2021年で、現在、あかり監査法人、史彩監査法人、監査法人Verita、みおぎ監査法人、南富士有限責任監査法人の5つの監査法人が、主要メンバーとして活動しています。定期的に研修会を開催し、それぞれが持つIPO監査の知見やスキルを共有し合うことで、IPO監査の品質向上に資する研鑽を積んでいます。

 私たちのような中小監査法人が質と量を共に充実し、IPO監査の裾野を拡げていかなければ、「IPO監査難民問題」は解決しません。金融庁もこの問題を重く見ており、2020年3月当時の報告書のなかで、IPO準備企業が必要な監査を受けられる環境整備について「喫緊の課題」だと指摘し、IPО監査の「新たな担い手」の必要性をうたいました。一方で、「監査品質の確保はすべての根幹であり、監査そのものの信頼性を損ねることがあってはならない」とも言及しています。

―どういったことでしょう。

 IPO監査に関する「需給のミスマッチ」という問題の解消だけに意識が向けられてはいけない、という注意喚起だととらえています。IPO監査には、会計制度や内部統制が未整備のIPO準備企業に対する「指導業務」といった要素も色濃くあるため、通常の監査業務以上に手がける分野が多岐にわたり、知識の広さと深さが求められます。金融庁は、そうしたことに対応できる高度な人材を用意しないまま、IPO監査を引き受けてしまう監査法人が現れることに対して懸念を示しているのでしょう。その点、私たち「次世代監査法人IPOフォーラム」のメンバーは、IPO準備企業が安心して監査を依頼できる監査法人の集まりであると自信を持ってお伝えできます。

各監査法人が共有する、IPO監査への「強い使命感」

―みなさん、どのような特徴を持っているのですか。

 どの監査法人も、豊富なIPO監査の実績がある会計士を揃えていることに加えて、なによりも「IPO監査に対する強い使命感」を持っています。だからこそ、各監査法人が蓄積してきた知見やノウハウを月1回以上開催する研修会で惜しみなくメンバー全員で共有することによって、それぞれのIPO監査の品質を高め合っているのです。こうした私たちの活動に意義を感じ取ってくれてか、金融庁とは意見交換会を開き、東京証券取引所、証券会社の方々も研修会に参加してくれたりしています。そこでは、私たちが知り得ないIPO関連情報も共有してくれることから、IPO監査の品質を磨き込めると感じています。

―今後、どのような方針でIPO監査に取り組んでいきますか。

 私たちは、「志のある企業がIPOできるように全力で取り組む」という強い姿勢で、IPOへ果敢に挑む経営者に「寄り添う」姿勢も大切にしながら、IPO監査の裾野を拡げられるよう精進してまいります。
次世代監査法人IPOフォーラム
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