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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社WonderPalette 代表取締役CEO 尾上 寿明

革新的な商品需給モデルの構築に挑む若き起業家の大志

生成AIによる高精度な需要予測で、持続可能な食品産業の未来を創る

株式会社WonderPalette 代表取締役CEO 尾上 寿明

近年、生成AIを活用し、ビジネス改革に向けた取り組みを進める企業が増えている。そうした企業を支援すべく、AIによる「需要予測」モデルを開発したのがWonderPaletteだ。創業初年度ながら、大手食品メーカーから依頼を受け、従来の手作業による需要予測よりも高い精度を実現している。「需要予測の精度を高める仕組みを通じて、食品業界の未来を変革したい」と語る同社代表の尾上氏に、事業にかける想いを聞いた。
※下記はベンチャー通信91号(2024年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

独自開発の需要予測AIで、企業活動全体を変革する

―事業内容を教えてください。

 食品業界を中心に、企業のAI活用に特化したコンサルティング事業を展開しています。当社では、クライアント企業の現場レベルからヒアリングして課題を洗い出すことで、それぞれの実情に合わせたAIの開発や運用を柔軟に行い、多様な業務における改善策を提案しています。こうしたコンサルティング業務を行うなかで、当社では商品の需要予測を行う『Wonder予測AI』というSaaSを開発しました。

―どのようなサービスでしょう。

 商品の過去1年間の売上データをもとに、AIによるアルゴリズムで、店舗ごとの需要を予測するサービスです。需要予測は、一般的には各店舗の責任者や営業職が、過去の売上データを見ながら独自のメソッドで行っています。しかし、企業の規模が大きくなればなるほど、データを処理するだけでも膨大な時間がかかるうえに、最終的な予測の判断は、担当者の能力に頼らざるを得ません。その結果、データの集計や解析の方法が店舗ごとで異なったり、担当者によって予測の正確性にバラつきが出たりするといった課題があります。特に、食品業界は、商品に賞味・消費期限があるうえに、バレンタインやクリスマスなどの催事が需要を大きく左右するため、この予測が外れると企業にとって大きな損失にもなります。こうした課題を解決する目的で開発した『Wonder予測AI』ですが、私は、このサービスを通じて「企業価値向上」の支援もできると考えています。

―詳しく聞かせてください。

 食品メーカーなどの製造業にとって、需要予測は仕入れや生産、販売、人員配置などの計画を左右する根幹的な業務です。従来は部門や店舗単位での大まかな数値での予測が主流でしたが、『Wonder予測AI』では、SKU(※)単位まで予測できるようになり、細かな需要の流れを見通すことができます。つまり、需要予測の精度が高まることで、多くの事業計画を細かい数値で見直し、改善できるのです。そのうえ、担当者の需要予測にかかる時間的コストを大幅に削減できるので、そのぶん販売戦略などのクリエイティブな業務に割く時間が増え、品質やサービス向上などに人的資源を集中できます。需要予測の高精度化と効率化で、企業活動全体を変革し、価値向上に向けた事業を後押しできると考えています。
※SKU:ストック・キーピング・ユニットの略称。在庫管理上の最小の品目数を数える単位

AIの「知能」で生み出す、人間の創造的な「知恵」

―なぜ、『Wonder予測AI』を開発したのでしょうか。

 私は学生時代から、起業家になってGAFAのような世界的企業をつくりたいと考えてきました。特に、ChatGPTの登場以来、生成AIの分野に大きな可能性を感じており、当社を立ち上げる前には、個人でChatGPTを活用したAIサービスを展開していました。そんな折、私が開発した当時のAIサービスが『東京ばな奈』で知られるグレープストーン社の目に留まり、AIコンサルティングを依頼されたのです。そこで、私は食品業界の現状を把握するため、他の食品メーカーからもヒアリングを重ねていくなかで、需要予測の課題は特定の企業だけでなく、業界全体に根深く広がっていることを知りました。過去のデータをもとに予測する作業は、AIの得意領域だと知っていた私は、大規模な市場をもつ食品業界で課題解決の手伝いができれば、企業だけでなく社会にも大きな価値を提供できると思い、『Wonder予測AI』の開発を決心しました。

―この事業は、社会にどのような価値を提供できますか。

 まずは、SDGsでも取り上げられている「食品ロス削減」に貢献できると考えています。日本では年472万トンもの食品ロスが発生しており、その半分を小売店などが占めています(※)。当社が『Wonder予測AI』の精度を高め、日本の食品業界に浸透させられれば、食品ロス問題を改善し、生産・消費の持続可能性を高める取り組みとして、世界から注目を浴びることでしょう。これを足がかりとして、日本の食品プロダクトの販路を海外に広げられれば、「日本経済の成長」にも貢献できると思います。
※農林水産省による調査値(令和4年度推計値)

―今後のビジョンを教えてください。

 当社は、今後さらにAI活用の幅を広げ、多様な企業活動を支援していきたいと考えています。AIは緻密な「知能」をもちますが、人間のクリエイティブな「知恵」を生み出すことはできません。しかし、AIを活用することで、人間がもつ創造性を引き出し、企業や社会に多様な価値をもたらすことは可能だと思っています。より良い人間社会の未来に向けて、新たな価値創出の機会を生み出していきたいですね。
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