INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
「系統用蓄電所」開発に傾注するエンジニアリング企業の挑戦
高度な技術とワンストップ体制で、次世代の「再エネ」普及に挑む
GXエンジニアリング株式会社 代表取締役 小高 将司
再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及に伴い、電力需給を調整する「系統用蓄電所」への注目が高まっている。この新たなインフラの開発に2025年より参入したのがGXエンジニアリングだ。同社は高圧設備への深い知見と、土木・電気工事を内製化した一気通貫体制を武器に急成長を遂げている。代表の小高氏は「再エネに特化したエンジニアリング企業として、日本の電力インフラを支え、未来のGX(グリーントランスフォーメーション)の基盤を築く」と語る。同社の事業戦略と、業界にかける想いを同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信94号(2026年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

GXエンジニアリング株式会社
代表取締役
小高 将司こたか しょうじ
1994年12月、埼玉県生まれ。中学校を卒業後、翌年より鳶職として建設業界に従事。2014年、電気通信会社へ入社し、通信インフラ工事や電気工事の施工管理経験を積む。2020年、TNK株式会社(現:GXエンジニアリング株式会社)を創業。現在に至る。
系統用蓄電所の「調整力」は、投資案件から社会インフラへ
―事業内容を教えてください。
当社は、おもに再エネ設備の設計・施工管理・メンテナンスを行っています。かつては屋根設置型の太陽光発電設備の建設を中心に請け負っていましたが、現在は「系統用蓄電所」を建設し、提供する事業に傾注しています。この系統用蓄電所は、太陽光や風力のように気象条件によって出力が変動する電力を貯めておき、必要なときに供給する「調整力」として活用されます。たとえば、太陽光発電所は、晴天時に発電量が予測された量から超過する場合、現状では優先的に出力が制御されています。しかし系統用蓄電所があれば、電力の出力を制御することなく、蓄電と放電とを「調整」することが可能になり、効率的に収益を得られるようになります。再エネ・電気事業部門をもつ企業や、太陽光発電関連企業をはじめ、近年は電力事業のノウハウをもたない企業の間でも関心が強まっています。
―なぜ多くの企業が関心を強めているのでしょうか。
その背景には、再エネ設備の急速な導入拡大があります。特に、太陽光発電は昼間に集中して発電するため、時間帯によって電力の需給バランスが大きく変動する構造が生まれました。この需給ギャップを調整する役割として、近年は系統用蓄電池の重要性が高まっています。2024年頃からは、電力の需給バランスを調整する「需給調整市場」の取引が本格化し、蓄電した電力の取り引きが事業として成立しやすい環境も整っています。この市場で取引される「調整力」は、まさに系統用蓄電池と相性が良く、効率的な収益化が見込めます。また、「卸電力市場」では、太陽光発電が集中する昼間は価格が低下し、夜間や需要が高まる時間帯には価格が上昇する傾向があります。系統用蓄電所で価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電することで収益機会を得られます。2026年度から取引価格の上限設定が変更される予定ですが、適切な事業設計とリスク管理を行えば、一定の投資回収が見込める事業として評価されています。
一方で私は、系統用蓄電所の収益性以上に、再エネを支える安定した電力供給網のインフラ構築こそが、大きな社会的価値になると考えています。
一方で私は、系統用蓄電所の収益性以上に、再エネを支える安定した電力供給網のインフラ構築こそが、大きな社会的価値になると考えています。
―そのように考える理由は、どのような点にあるのでしょう。
2026年から、日本でも排出量取引制度(※)が本格化し、脱炭素化の流れはさらに加速します。しかし、再エネの普及拡大にはコストや適地不足、新規電源の接続の難しさなどにより、「発電所を増やすだけ」では脱炭素社会は実現できない段階に入っています。今後重要になるのは、ムダなく再エネを安定的に活かす仕組みです。系統用蓄電所は、余剰電力を吸収し不足時に供給することで電力を時間軸で調整し、再エネの価値を最大化する役割を担います。そのため、系統用蓄電所は単なる収益事業ではなく、脱炭素社会を支える重要なインフラであり、保有・運営する企業の価値向上にもつながると考えています。
※排出量取引制度 : GT-ETS。排出した炭素に価格が付き、排出枠(排出の上限)を超えれば経済負担が発生する制度。CO₂直接排出量10万t以上の国内企業300~400社が対象
分断された工程を一つにし、全体最適の視点で事業を推進
―系統用蓄電所の事業化に向け、どのようなサービスを提供していますか。
系統用蓄電所の事業化までは、複数の事業者による協業が一般的ですが、当社では、系統用蓄電所の用地選定・取得交渉、電力会社との連系協議、基本設計・詳細設計、行政対応、土木・電気工事の施工管理、そして竣工後の保守運用までをワンストップで提供しています。なかでも、申請協議・設計・行政対応・土木と電気の施工管理については、スピードと緻密な調整が求められる領域であるため、基本的に社内で完結できる体制を整えています。用地取得においては、不動産会社などと連携し、建設段階では当社が元請として専門工事会社を統括しますが、社内の各担当者と施工管理者が全工程を横断的に管理することで、一つのプロジェクトとして統合して事業にあたることができています。
―なぜGXエンジニアリングはワンストップ体制を構築できるのでしょう。
その基盤にあるのは、太陽光発電事業で培ってきた豊富な実績があるからです。当社は、設計、電力会社との協議、建設、運用・保守までの事業をこれまで300件以上積み重ねてきました。特に高い専門性が求められる高圧設備(※)を扱う設計力に加え、協議対応や施工管理力、保守までの一貫した現場経験が、現在の蓄電所事業の土台となっています。そのうえで、当社は一級施工管理技士をはじめとする有資格者を配置し、電気工事業・土木工事業・舗装工事業・鋼構造物工事業などにおいて特定建設業許可を取得しています。これにより、数億円規模におよぶ工事にも制度上・技術上の両面から対応できる体制を整えています。さらに、太陽光の保守分野においては第三種電気主任技術者による点検・検査体制を整備しており、施工後の安全性と安定稼働まで責任をもって対応しています。専門性の異なる分野を横断的にマネジメントできる体制と、設計から施工、保守までの現場経験があるからこそ、系統用蓄電所事業を一貫して遂行できるのです。
※高圧設備 : 「600V(直流750V)を超え7,000V以下の交流電圧」の高圧、「7,000Vを超える交流電圧」の特別高圧といった電圧を持つ中~大規模施設を指す。
―系統用蓄電所の事業化には、どのような難しさがあるのでしょう。
系統用蓄電所の事業化には、土木・電気・再生可能エネルギーそれぞれの分野において高い専門性が求められます。3つの領域を横断的に理解し、統括できる力が不可欠です。当社の強みは、これらの分野を統合できる点にあります。土木と電気の二軸管理に加え、再エネ事業で培った設計・協議・施工・保守の経験を活かし、全体最適の視点で案件を推進しています。この統括力こそが、プロジェクトを円滑に進める推進力となり、結果としてスピード・顧客の事業性判断・実績および品質の向上につながっていると思います。
高品質・低コスト・短工期で、再エネ普及のリーダーになる
―一方で、用地買収には、工事事業者にはない専門性が必要になりませんか。
その通りです。用地取引の知識などについては、専門業者に分があることは承知しています。しかし、ここでも私たちの「技術力」が活きて、異なるアプローチで優位性を競っています。
一般的な不動産会社や転売目的の事業者の場合、土地を安く仕入れて高く売る「利ざや」で利益を得るため、どうしても買い取り価格にはシビアな上限があります。しかし、私たちは土地の転売そのもので利益を出そうとは考えていません。土地を実際の相場より高く買い取ったとしても、その後の建設工事全体で収益を確保できれば、ビジネスとして十分に成立するからです。つまり、他社が提示できないような高値であっても、建設費を含めたトータルの事業収支で調整し、買い取ることが可能なのです。
特に、現在はこの用地の買い取りに力を入れており、相場より高値で買い取るといった提案もしています。私たちのもとには「蓄電所を買いたい」というオファーが殺到しており、系統用蓄電所の建設に見合った電力協議済み(※)の土地であれば、精査のうえ最短1ヵ月以内での契約も可能です。
一般的な不動産会社や転売目的の事業者の場合、土地を安く仕入れて高く売る「利ざや」で利益を得るため、どうしても買い取り価格にはシビアな上限があります。しかし、私たちは土地の転売そのもので利益を出そうとは考えていません。土地を実際の相場より高く買い取ったとしても、その後の建設工事全体で収益を確保できれば、ビジネスとして十分に成立するからです。つまり、他社が提示できないような高値であっても、建設費を含めたトータルの事業収支で調整し、買い取ることが可能なのです。
特に、現在はこの用地の買い取りに力を入れており、相場より高値で買い取るといった提案もしています。私たちのもとには「蓄電所を買いたい」というオファーが殺到しており、系統用蓄電所の建設に見合った電力協議済み(※)の土地であれば、精査のうえ最短1ヵ月以内での契約も可能です。
※電力協議済み : 電力会社との協議を終え、蓄電所建設の許可が取れている土地
―このワンストップ体制は、顧客にどのようなメリットがありますか。
ワンストップ体制による顧客にとってのメリットは、大きく「コスト」「品質」「スピード」の3点にあります。
まずコスト面ですが、仲介業者や下請け構造を挟まず、私たちが統括してプロジェクトを遂行するため、複数社の協業で生じる余分な中間マージンをカットでき、割安での建設が可能になります。
次に品質とスピードです。工期遅延の要因の一つに設計ミスがあります。たとえば、土地の形状に対して蓄電池のレイアウトをどう組むかという視点は非常に重要です。「入る予定だった設備が入らなかった」「メンテナンススペースが確保できない」といったトラブルが実際に起こり得ます。一方、私たちは重量物の搬入計画からメンテナンス導線といった綿密な設計を行います。さらに、電気と土木が連携して検証するため、手戻りがなく、スムーズな施工が可能です。
まずコスト面ですが、仲介業者や下請け構造を挟まず、私たちが統括してプロジェクトを遂行するため、複数社の協業で生じる余分な中間マージンをカットでき、割安での建設が可能になります。
次に品質とスピードです。工期遅延の要因の一つに設計ミスがあります。たとえば、土地の形状に対して蓄電池のレイアウトをどう組むかという視点は非常に重要です。「入る予定だった設備が入らなかった」「メンテナンススペースが確保できない」といったトラブルが実際に起こり得ます。一方、私たちは重量物の搬入計画からメンテナンス導線といった綿密な設計を行います。さらに、電気と土木が連携して検証するため、手戻りがなく、スムーズな施工が可能です。
―今後の展望を聞かせてください。
系統用蓄電池事業を開始してから約1年、昨年施工を請け負った案件は引き渡しを終え、順次稼働しています。現在は12件のプロジェクトが同時に進行中で、半分の約6件は、今年の春から夏にかけて完成予定です。2027年は、今期の2倍となる高圧案件での実績拡大を計画しています。また、2028年以降は特別高圧案件の開発も控えており、段階的にステージを引き上げながら、実績を積み重ねていく方針です。私たちは、この事業を通じて、「再エネ業界全体の発展にも貢献する」という使命のもと、今後のGX社会実現を加速させる「再エネ総合エンジニアリング企業」としての挑戦を続けてまいります。
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