INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
ソニー前CEOがベンチャー育成に挑む
ベンチャーこそ、ルールブレイカーたれ
クオンタムリープ株式会社 代表取締役 出井 伸之
出井はソニーで10年間に渡ってトップを務め、経団連の副会長も5年務めた日本経済界の重鎮である。2006年9月、出井は“非連続の飛躍”を意味する「クオンタムリープ」という名のベンチャーを自身で興す。起業の目的は、日本のベンチャーを育成し、ブレイクスルーさせる仕掛けを作るため。今回は出井ならではのグローバルな視点で、ベンチャー論を大いに語ってもらった。
※下記はベンチャー通信37号(2009年新春号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―出井さんは2006年に「クオンタムリープ」を立ち上げました。社名に込めた想いを教えてもらえますか。
出井:「クオンタムリープ」とは量子力学の世界の言葉で“非連続の飛躍”を意味します。事業や技術の成長というのは、右肩上がりの直線のように連続的に伸びていくわけではありません。突然、飛躍的にジャンプすることがある。これは私自身がソニー時代に何度も経験したことです。スポーツの場合でも、練習を重ねていると突然上手くなる瞬間があります。そして、いま日本という国にも、この“非連続の飛躍”が必要という意味で、「クオンタムリープ」という社名をつけました。
―出井さんは、世界的なコンサルティングファームのアクセンチュアや百度(中国最大の検索エンジン)など、様々な世界的企業の社外取締役も務めています。それぞれの企業の業種や国籍は様々ですが、出井さんが共通して伝えているメッセージはありますか
出井:私が常に経営陣に伝えているのは、未来を見据える視点を持つこと。未来の競争相手は誰か?未来の顧客は誰か?未来の株主は誰か? 10年、20年、50年先のことを、表面的に捉えるのではなく、常に本質的に捉えなければ経営はできません。
たとえばアクセンチュアの場合、現在の競争相手は欧米の大手コンサルティングファームです。でも未来の真の競争相手は、インドという国家かもしれない。では、どうすればインドに勝てるのか。また現在の顧客は20世紀に確固たるブランドを築いた世界的企業がほとんどですが、20年後に果たして既存顧客のどれぐらいが生き残るのか。
百度の場合も、現在の中国では圧倒的に強い。中国国内の検索エンジンのシェアで、グーグルやヤフーを大きく引き離しています。しかし、それは未来も揺るぎないのか。彼らも未来のことを真剣に考え抜いているから、新規参入が難しいと言われている日本にも進出してきました。私ができることは、彼らに未来の課題を気づくきっかけを提供することだと考えています。経営をし始めると、みんな目の前の短期的視点に囚われがちですから。
たとえばアクセンチュアの場合、現在の競争相手は欧米の大手コンサルティングファームです。でも未来の真の競争相手は、インドという国家かもしれない。では、どうすればインドに勝てるのか。また現在の顧客は20世紀に確固たるブランドを築いた世界的企業がほとんどですが、20年後に果たして既存顧客のどれぐらいが生き残るのか。
百度の場合も、現在の中国では圧倒的に強い。中国国内の検索エンジンのシェアで、グーグルやヤフーを大きく引き離しています。しかし、それは未来も揺るぎないのか。彼らも未来のことを真剣に考え抜いているから、新規参入が難しいと言われている日本にも進出してきました。私ができることは、彼らに未来の課題を気づくきっかけを提供することだと考えています。経営をし始めると、みんな目の前の短期的視点に囚われがちですから。
―出井さんが考える「ベンチャーの役割」を教えてください。
出井:“ルールブレイカーたれ”ということです。大企業が作った既存のルールをぶち壊して、新しいルールを作ってほしい。大企業の下請けだけをしている企業は、私の考えるベンチャーの定義には入ってこないと思っています。また真のルールブレイカーはそうそうたくさん出てくるものではなく、100社のベンチャーのうち1社もあればいいと思います。この玉石混交のベンチャーの集まり、“台所”のような場所をベンチャー業界と呼ぶのだと思います。
最近の日本のベンチャーが盛り上がってこない理由は、大企業が作った既存のルールの“はしっこ”をちょこちょこと変えているだけだからではないでしょうか。日本は既に技術やサービスも成熟しているので、なかなかルールブレイクとなる技術やサービスが生まれないのは分かります。しかし、もっとベンチャーには頑張ってほしい。また大企業の側も自分たちが作った既存のルールを壊したくないので、ベンチャーを押さえつけようとしがちです。これまでに利益を生み出し続けてきたモデルを、あえて自分たちで壊したくないんです。そこが日本の問題点です。
昔はソニーも小さなベンチャーでした。世界中のラジオが真空管で動いていた時代に、ソニーはトランジスタラジオという半導体で動くラジオを作った。まさにルールブレイカーだったわけです。でも1955年にソニーがトランジスタラジオを発売した後も、松下電器産業(現:パナソニック)や東芝は真空管で動くラジオを作り続けました。大企業はなかなか既存のルールを変えられません。だからベンチャーこそ、変革を加速させる必要があるんです。
たとえばグーグルはルールブレイカーです。あらゆるネット上の情報をオープンにしたプラットフォームを作って、既存のメディアや広告のルールをぶち壊した。今さら説明するまでもありませんが、グーグルは単なる検索エンジンを提供するIT企業ではありません。また無線通信技術のベンチャーであるクアルコムは、「CDMA」という新しい無線通信方式のプラットフォームを作った。そして、それまでの電話の通信方式をガラリと変えてしまった。このような役割こそ、ベンチャーの本質だと思います。
最近の日本のベンチャーが盛り上がってこない理由は、大企業が作った既存のルールの“はしっこ”をちょこちょこと変えているだけだからではないでしょうか。日本は既に技術やサービスも成熟しているので、なかなかルールブレイクとなる技術やサービスが生まれないのは分かります。しかし、もっとベンチャーには頑張ってほしい。また大企業の側も自分たちが作った既存のルールを壊したくないので、ベンチャーを押さえつけようとしがちです。これまでに利益を生み出し続けてきたモデルを、あえて自分たちで壊したくないんです。そこが日本の問題点です。
昔はソニーも小さなベンチャーでした。世界中のラジオが真空管で動いていた時代に、ソニーはトランジスタラジオという半導体で動くラジオを作った。まさにルールブレイカーだったわけです。でも1955年にソニーがトランジスタラジオを発売した後も、松下電器産業(現:パナソニック)や東芝は真空管で動くラジオを作り続けました。大企業はなかなか既存のルールを変えられません。だからベンチャーこそ、変革を加速させる必要があるんです。
たとえばグーグルはルールブレイカーです。あらゆるネット上の情報をオープンにしたプラットフォームを作って、既存のメディアや広告のルールをぶち壊した。今さら説明するまでもありませんが、グーグルは単なる検索エンジンを提供するIT企業ではありません。また無線通信技術のベンチャーであるクアルコムは、「CDMA」という新しい無線通信方式のプラットフォームを作った。そして、それまでの電話の通信方式をガラリと変えてしまった。このような役割こそ、ベンチャーの本質だと思います。
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