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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久

設立わずか9年で東証一部に上場した企業のトップが語るベンチャー観

大手企業を逆転するチャンスが到来

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久

※下記はベンチャー通信49号(2012年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―今後のビジョンを教えてください。

青野:キーワードは「クラウド」です。以前はグルーバルにビジネスを展開したい場合、現地に赴任してシステムを設置したり、サポートする人が必要でした。しかし、クラウド・コンピューティングの場合、データはインターネット上にあるため、どこの国で購入してもサポートに出向く必要がありません。そういう意味では、我々のような小さい会社でも世界で戦える環境が整っていると言えます。そこで当社も、数年前からクラウドに技術投資を行っており、2011年11月にクラウドサービス「cybozu.com」をリリースしたんです。

―アジアに進出しているベンチャー企業が多いですが、御社はどういった展開を考えていますか?

青野:アジアももちろん視野に入れていますが、アメリカで勝負したいですね。ITの市場では、常にシリコンバレーに熱い視線が送られていますから。そこで注目されれば、世界中で注目されることになります。当社は過去に一度、サンフランシスコに子会社を設立したのですが、撤退したという苦い思い出があります。なので「リベンジしたい」という思いもありますね。具体的には、来年に進出する予定です。

―スバリ勝算はありますか?

青野:シリコンバレーで働いている技術者は、中国やインドなど世界中から飛び抜けて優秀な人が集まっており、いわばITのオリンピック。そんなドリームチームと戦うわけですから、大変だと思います。マイクロソフトやグーグルも、決して簡単に勝てる相手ではありません。でも、同時にワクワクもしているんです。

無謀だと言う人も多いでしょう。でも、よくよく考えてみたら、わずか3名で松山のマンションの一室で創業したんですから。まさかその当時、IBMやマイクロソフトのグループウェアの日本シェアを逆転するなんて、誰も思わなかったでしょう。そう考えると、非現実的な話でもない。「本当に勝てるんですか?」と聞いてくる社員には、そんなふうに答えています。

―一般論として、日本から世界で戦えるベンチャー企業が出てくると思いますか?

青野:個人的にはIT技術者が虐げられない、良い時代になったと思っています。今までプログラマーというと、下請けの作業者というイメージでした。上から降りてきた業務を、納期通りに仕上げることが重要視されるという傾向です。これでは夢も持てないし、モチベーションも上がりません。しかし、私たちのようにパッケージで勝負できるようになると自分たちだけで考えてモノがつくれる。そっちのほうが楽しいし、当たればグローバルに展開もできます。

最近は、大手企業の市場における優位性が崩壊し、昭和の巨像が落ちつつあるという印象を受けます。大手電機メーカーの相次ぐ大幅な赤字決算は、それを強く実感するできごとでした。これまで法人向けのIT業界においても大手が強く、ベンチャー企業が台頭するのは難しい状況でしたが、ようやく対等に勝負できる土壌ができつつある。そのため、今こそベンチャー企業が逆転するチャンスです。条件が対等であれば、小回りの効くベンチャー企業のほうが絶対に有利。特に、法人向けのITビジネスは宝の山だと思いますよ。

―起業家に必要な条件があれば教えてください。

青野:まず、貧乏に耐えられるかどうか。会社を興した当初は、悲惨な生活を送る可能性が高いですから。私自身、創業当初は給料ゼロで住民税、年金とも払えなくて。市役所に「支払いを待ってください」と頭を下げた経験があります。それを惨めと感じない、耐性の強い人が向いているでしょう。

あと、「何をしたいのか」がポイントだと思います。よく、社長になりたいという人はいますが、登記さえすればだれでも社長になれます。大切なのは「社会にどんな価値を生みたいか」、「どんな人を幸せにしたいか」といったことをきちんと考えておくことです。私の場合は、「この技術を使ったら、相当みんな便利になるぜ」というのがもともとの発想でしたから。それが会社のビジョンであり、志なんです。

―最後に若い人に対し、メッセージをお願いします。

青野:自分で責任を取る習慣をつけることをオススメします。たとえば私が「英語を勉強したほうがいい」と助言して勉強した結果、役に立たなかったとします。そこで、「青野さんはウソを言った」と考えてはダメなんです。誰に何を言われたとしても、やると判断したのは自分。結果はさておき、選択したのは自分自身であると常に自覚することです。そうすれば、言い訳も人の愚痴も言わなくなり、主体的に生きることができます。私自身、そのことに気づいたのは30代半ばになってから。社長になっていろいろ失敗を経験し、模索しながら見つけていったんです。言わば、今も修行中なんですよ。
PROFILE プロフィール
青野 慶久(あおの よしひさ)プロフィール
1971年、愛媛県生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科を卒業後、松下電工(現:パナソニック)株式会社を経て、1997年にサイボウズ株式会社を愛媛県松山市に設立し、取締役副社長に就任。その後、2005年4月に代表取締役社長に就任する。現在は、2児のイクメンとしてバリバリ仕事をこなしつつ、育児も積極的に行なっている。
企業情報
設立 1997年8月8日
資本金 6億1,300万円
売上高 42億2,500万円(2012年1月期連結)
従業員数 357名(2012年1月末時点連結)
事業内容 情報通信、情報提供に関するサービスならびにソフトウェアの開発、販売
URL http://cybozu.co.jp/
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