ベンチャー通信Online > 起業家インタビュー > 著名起業家 > 株式会社グロービス 代表 堀 義人

INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社グロービス 代表 堀 義人

起業家には強い感性が必要だ

株式会社グロービス 代表 堀 義人

日本のベンチャー育成に人生を賭けている男がいる。ビジネススクールやベンチャーキャピタル事業を手がけているグロービス代表の堀義人だ。堀は、27歳でハーバード大学へ留学、そこでMBAを取得。しかし、最大の収穫はアメリカで目の当たりにしたベンチャースピリットだった。アメリカでは優秀な人材ほど起業する。日本では依然、優秀な人材は大企業や官庁に行く。危機感を抱いた堀は、帰国してグロービスを起業。そして、いま堀は自身でも起業家として活躍し、日本にベンチャーを根付かせるために日々格闘している。
※下記はベンチャー通信21号(2006年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

経営に関する「ヒト」、「カネ」、「チエ」のビジネスインフラを構築

―まずグロービスの事業内容を教えてください。

堀:グロービスでは、経営に関する「ヒト」、「カネ」、「チエ」のビジネスインフラを構築し、社会の創造と変革をサポートしています。具体的な事業内容は5つあります。1つ目が、ビジネススクールの事業。これは「日本に欧米の経営大学院に匹敵するビジネススクールを作りたい」という志から始まりました。いまでは年間のべ1万人弱にも及ぶビジネスパーソンが学んでいます。そして、2つ目が企業内研修の事業。3つ目は出版事業。これは経営知を集大成して発信しています。つまり経営の「チエ」の部分。4つ目は、ベンチャーキャピタル事業です。創業・成長段階のベンチャー企業に投資をするビジネスです。これは「カネ」の部分ですね。そして最後の5つ目が、これは「ヒト」の部分の人材紹介の事業です。

―そもそも堀さんが考える“ベンチャー”って何ですか?

堀:ベンチャーとは、社会におけるイノベーションの器だと思います。志を持った起業家がリスクテイキングして社会に対してイノベーションを行う。このイノベーションを行う器のようなものがベンチャーというものだと思います。だから志が無かったり、イノベーションが無かったりするものをベンチャーとは呼べないと思います。

―なるほど。では“起業家”とは何ですか?

堀:起業家は自由人。経営という手法を使って、自由な発想で自らのビジョンを描いていく。それも真っ白なキャンバスに、自由に絵を描いていくように。

―ある意味、芸術家に近いですね。

堀:そうですね。画家は絵筆をふるって絵を描きます。起業家の場合は、“言葉”を使って絵を描いていくんです。この言葉が、つまり会社のビジョンなんです。起業家に必要なのは、“絵”つまり“ビジョン”です。会社はどこに向かうのか。この会社の社会における存在意義は何か。そこをはっきりさせなくてはいけない。だから起業家には、絵を描き切る力がないといけない。想像力が豊かで、イメージする力を持っている人じゃないといけない。ここは科学では到達できない分野ですね。そして、起業家にも2つのタイプがある。1つが金儲けを目的として経営をする人。もう1つがビジョンを持って経営をする人。言うまでもなく、金儲けを目的としている人は大きな会社を作ることは不可能です。私利私欲に走る人に社員は付いていきませんし、そういう人を社会は成功させません。もし成功したとしても、その成功は長くは続かないでしょう。成功する起業家というのは、想像力が豊かで、きっちりとしたビジョンを描き切り、それを実行に移すことができる人です。

―起業家に必要なのは、まずはビジョンということですね。

堀:そうですね。そこが一番大事です。また描いたビジョンを積極的に人に伝える。そうやって社内や社外にビジョンを浸透させ、会社を引っ張っていく。またビジョンというのは、そんなに小難しく考えなくてもいいんです。自分が本当にやりたいことを、とりあえず簡単に書き出していく。どんな身近なことでも構わない。自分の今までの人生で培ってきたことを、自分の言葉で書き出すことです。そしてビジョンがある程度できあがったら、次にそのビジョンを達成させるための戦略を考える。つまり、ビジネスを科学する。ここで必要なのは、感性というよりもテクニカルな部分ですね。私は、起業とは、夢(ロマン)であり、芸術(アート)でもあり、科学(サイエンス)でもある。そして何よりも人間的プロセス(ヒューマン)でもあると思います。
※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。