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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

堀場製作所 創業者 堀場 雅夫

おもしろいことをやれば成功する

堀場製作所 創業者 堀場 雅夫

※下記はベンチャー通信38号(2009年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―では起業家の資質とは別に、ベンチャー企業の「成功の条件」はありますか。

堀場:主に3つあると思います。まず1つ目の条件は「市場」、つまりマーケット。そのビジネスがマーケットから必要とされていなければ、絶対に成功しません。たとえば、技術屋は技術に惚れ込んでしまうことがある。その張本人が私です(笑)。この技術は素晴らしいと信じて、営業マンに商品を売らせてみる。でも一向に売れない。お客さんには「この技術は素晴らしいと思います。でもウチはいりません」と言われる。世の中から必要とされていなければ、どんなに技術が優れていても売れるはずがないんです。そして、2つ目の条件が「継続」。ベンチャー企業は大きな花火をひとつ打ち上げるだけではダメです。社会の進展と共に、技術やサービスをバージョンアップしていかなければいけません。3つ目の条件は「社会への貢献」、つまり社会に役立つ事業を行うこと。はやりのCSR(企業の社会的責任)とは違いますよ。CSRと謳って木を植えることも結構ですが、まず事業そのものが社会に役立っていなければいけません。木を植えることが何かの免罪符だとしたら、それは本末転倒でしょう。そもそも事業が社会の役に立っていなければ、利益も出ないはずです。商売とは、儲けようと思って儲かるものではありません。商売とは、情熱を持って、社会に役立つ事業をしっかりと継続することです。その結果として、儲かるわけです。

―ベンチャー企業が気をつけるべき“落とし穴”はありますか。

堀場:資金繰りでしょうね。特に、技術系のベンチャー企業は資金繰りに苦労して、技術開発のチャンスを失うケースが多い。だから私の考えでは、どんなビジネスでも会社設立時に2千万円は資本金を積むべきです。いま銀行は超低金利で、世の中にお金は余っています。だから、情熱と綿密な事業計画があれば、2千万円ぐらいは集まります。それができない人は、商売にそもそも不向きだと思います。なぜなら、それは「自分の情熱や事業の将来性を支援者に伝えられない」という証拠だからです。

―最近の新興市場の停滞について、どう捉えていますか。

堀場:新興市場の停滞は、現在の世界的大不況が原因ではありません。その前から兆候は出ていました。だから不況の今こそ、ベンチャー企業や新興市場のあり方を見直さないといけません。振り出しに戻って、冷静に考える良い機会だと思います。最近の新興市場は、会社設立から3年ぐらいでIPOできるでしょう。あれはおかしいですね。当社はIPOまで17年かかりましたが、それでも当時はスピード上場と言われていました。IPOするのであれば、事業を継続的に成長させて、企業にホンモノの価値があることを証明しないとダメです。だから、それなりに時間をかけて、しっかり体制作りをしなければいけない。IPOした途端、利益率が半分になるようなベンチャー企業には、IPOの資格がありません。また短期間でIPOを果たした起業家の中には、すぐに自社株を売り抜ける人間もいます。そんな人間は、サブプライムローンを売り逃げした連中と何ら変わらんでしょう。人間として最低です。金儲けを目的にした企業は、いずれ潰れます。残りカスの株式をつかまされた個人投資家がかわいそうですよ。

―最後に、若者へのメッセージをお願いします。

堀場:人生は一度きりです。だから、自分のやりたいことをしてください。あなたはもしかすると、明日死ぬかもしれません。だから、今この瞬間を楽しく生きてください。つまらない瞬間を積み重ねても、つまらない人生しか送れません。そのことを私は逆説的に「イヤならやめろ!」と言っているわけです。単純に「やりたいことをやれ」と言っても、おもろないからね(笑)。イヤなことを頑張って続けても、なかなかうまくいかないはずです。自分が好きなこと、おもろいと思うことをやらんと成功しません。私は84年間生きてきましたが、イヤイヤ仕事をしながら成功した人を未だかつて見たことがない。失敗している人は、おもろいことが見つかっていない人です。もしくは見つかっていても、それをやっていない人です。みなさんも、常にチャレンジして、人生を満喫してください。
PROFILE プロフィール
堀場 雅夫(ほりば まさお)プロフィール
1924年、京都市生まれ。1945年、京都帝国大学(現:京都大学)理学部在学中に堀場無線研究所を創業。国内初のガラス電極式pHメーターの開発に成功し、1953年、株式会社堀場製作所を設立。社員に博士号の取得を推奨し、自身も1961年に医学博士号を取得。1978年に会長、2005年に最高顧問に就任。現在は日本新事業支援機関協議会会長、京都市ベンチャー企業目利き委員会委員長など、起業家の育成に力を注いでいる。著書に『イヤならやめろ!』(日本経済新聞出版社)、『今すぐやる人が成功する』、『仕事ができる人できない人』(三笠書房)など、ベストセラー多数。
企業情報
設立 1953年1月26日
資本金 119億5,200万円
売上高 1,442億8,300万円 ※連結売上高
従業員数 4,976名 (グループ従業員数)
事業内容 自動車計測機器、環境用計測機器、科学計測機器、医用計測機器、半導体用計測機器の製造販売。分析・計測に関する周辺機器の製造販売。分析・計測に関する工事、その他の建設工事ならびにこれらに関する装置・機器の製造販売
URL http://www.jp.horiba.com
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