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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

テンプスタッフ株式会社 代表取締役社長 篠原 欣子

逆境にめげず、何事にも果敢にチャレンジしよう

テンプスタッフ株式会社 代表取締役社長 篠原 欣子

※下記はベンチャー通信32号(2008年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―篠原さんがいちばん印象に残っている経営の"壁"を挙げるとすれば、それは何ですか?

篠原:「社員100名、年商100億円」を目前にした"壁"ですね。それまで派遣スタッフも社員も女性のみでした。しかし女性だけの会社で、これ以上会社を発展させることが困難になったんです。ちょうど起業して14年目、1986年の頃です。当社は『成長の鈍化』という"壁"にぶちあたりました。起業から13年間はバックオフィスの数名の男性を除いて、社員全員が女性でした。もちろん支店長も女性のみ。支店展開をしたものの、支店長たちは守りに入っていたんです。支店長に新規の顧客開拓について聞いても、「もう顧客開拓はすべてやり尽くしました。新規開拓の余地はありません」と。私は内心、そんなことはないと感じていました。そして、そろそろ女性だけの組織に限界がきたなと思ったんです。
 また当時、一部の女性の支店長は"女王"と化していました。優秀な女性の支店長は、その支店すべてを自分の管理下において、既得権益にしてしまっていた。いくら私が新規開拓をしよう!と言っても、彼女たちの耳には届きませんでした。女性の集団というのは、守りは強いけど、攻めは弱い傾向にあります。なかなか攻めようとしないんです。女性には女性特有の強みが、男性には男性特有の強みがあります。女性は、地道に足元を固めながら前に進みます。目の前にある課題を黙々と改善するので、安定感は高い。基礎を固めながら着実に伸ばします。そして、論理よりも感性を重んじる傾向があります。

 男性は、大きな夢や野心を持ち、ぐいぐいと組織を引っ張っていく。明確な目標も数字にして表し、何事も論理的に考える傾向があります。人間も動物です。DNAに刻み込まれているのだと思います。女性は子育てを、男性は狩りに出かけるというように。そして、この女性と男性の両方の力が企業経営には必要です。それまでは女性だけの力で伸ばしてきました。驚くことに、売上目標もなければ、個人のノルマもない。ただ、目の前にある課題に地道に挑み続けて、年商75億円までもってきたんです。女性の力って、本当に素晴らしいと思います。しかし、これ以上会社を発展させようと思えば、女性だけの組織では限界に達していたのも事実です。私は大改革を断行することを決断しました。

―男性社員を採用したということですか。

篠原:そうです。まず86年に男性アルバイトを採用し、87年には大手商社から男性が入社。88年にはリクルートの男性営業マンをスカウトしました。その後の3年間で30名の男性社員を採用しました。

―女性社員からの反発はなかったんですか?

篠原:もう大混乱ですよ。既得権益を守ろうとする女性と、新しく入ってきて改革をしようとする男性の間で戦争がはじまりました。私もずいぶんと悩みました。しかし、この改革を断行しないと、会社の将来はないと確信していたので、涙を飲んでトップダウンで決断しました。どんなに苦しくてつらくても、会社の体質が変わるまではやり抜こうと固く決意しました。改革の途中で、いろんなことが起きました。夜中に、古参の女性社員から「もう私は会社に必要ないんじゃないの?」と泣きつかれたこともありました。

 また、男性社員からは血判状を突きつけられました。「売上目標や勤務評価制度などをつくらなければ、会社は発展しません。要求が受け入れられなければ、私たちは辞めます」と。1枚の紙を渡され、その紙には会社への改善案と、7名の血判が押されていました。血判状を突きつけられた私は、逆に彼らの本気さに感動しました。そして何よりも経営について話せる仲間ができて、本当に嬉しかった。その後、彼らが主導となって、組織の構築、目標設定、大幅な人事異動、給与体系の見直しなどを数年かけて実行し、効率的な組織へと脱皮し、年商100億円を達成しました。私はこの改革を「第二の創業」と位置づけています。
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