INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
世界最大級のネットモールを創ったITベンチャーの旗手
世の中を動かすのは起業家だ
楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史
※下記はベンチャー通信54号(2013年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―昨年6月、三木谷さんは新経連の代表理事に就任しました。なぜ積極的に政策を提言しているのですか。
三木谷:もともと、楽天創業の精神が「自分たちがロールモデルになって日本を変えていこう。事業を通じて、日本をより開かれた社会にしていこう」というもの。だから、最初からモチベーションは変わっていないんです。
―「国の仕組みを変えないと、創業の精神は達成できない」ということでしょうか。
三木谷:そうですね。ひとりでは変えられないので、GMOの熊谷社長やサイバーエージェントの藤田社長らと一緒に立ち上げました。私は本当の意味で世の中を動かすのは、起業家だと確信しています。実業界がイノベーションを起こして、経済をけん引する。官僚がコントロールする社会は、必ず失敗します。実際、いままで日本が失敗した産業のほとんどは、旧通産省や経産省が管理していました。いい時期もありましたが、中長期的にみるとダメ。それなのに、まだ官民一体となってガラパゴス化に向かっている。これは極めてマズい状況ですよ。
―行政だけでなく企業にも問題があるので、新しい経済団体を旗揚げしたわけですね。
三木谷:旧来型の企業勢力は日本のガラパゴス化を進めています。原発の再稼働や発送電一体の問題だけじゃない。会計基準にしろ、社外取締役の義務化反対にしろ、すべての考え方が古い。進歩的に考えなければ、日本の未来はありません。
―残念ながら、この国には出る杭を叩く風潮があります。新経連が提言しているように、起業家を称賛する文化が必要ですよね。
三木谷:たとえば、私はフランスのレジオン・ドヌール勲章※を受章することになりました。安倍総理にメールで報告したところ、「それはすごいですね」とお褒めの言葉をいただきました。でも、日本では叩かれることが多い。私個人の話ではなく、リスクをとって価値を創造した起業家をたたえるべきです。
―起業家に必要な心がまえはありますか。
三木谷:楽天はブランドコンセプトとして「大義名分」「品性高潔」「用意周到」「信念不抜」「一致団結」を挙げています。煎じつめれば、必要なことはこの5つに集約されるでしょう。ビジネスの規模は小さくてもいいんですよ。大切なのは、創業時から“大義”を考えること。よく「○○年に株式上場するのが目標」という経営者がいますが、あくまで上場は手段。もっと大きな夢を追いかけてほしい。質的な向上も量的な拡大もかまいませんが、そもそも「世の中にどんな価値を提供するのか」という本質を熟考すべきです。
―個人の事業欲よりも、企業体としての大義が重要だと。
三木谷:もちろん、そうじゃない経営者がいてもいいと思いますよ。「うまいビールをつくりたい」とか「おもしろいゲームをつくりたい」という個人的な衝動でも、まったくかまわない。自分と違う考え方を否定するつもりはありませんから。
※レジオン・ドヌール勲章:1802年にナポレオンによって制定されたフランスの最高勲章。外国人の場合、フランスとの経済・文化交流における功労者などに与えられる。
PROFILE
プロフィール
三木谷 浩史(みきたに ひろし)プロフィール
1965年、神戸市生まれ。1988年に一橋大学商学部を卒業後、日本興業銀行に入行。1993年、ハーバード大学にてMBAを取得。1995年に興銀を退職後、株式会社クリムゾングループを設立。1997年に株式会社エム・ディー・エム(現:楽天株式会社)を設立し、代表取締役に就任。インターネット・ショッピングモール『楽天市場』を開設し、2000年に日本証券業協会へ株式を店頭登録。2004年、Jリーグ・ヴィッセル神戸のオーナーに就任。プロ野球界にも参入し、50年ぶりの新規球団・東北楽天ゴールデンイーグルスを誕生させた。2005年のアメリカ進出を皮切りに、台湾、タイ、インドネシア、フランス、ブラジルなど、グローバル展開を推進。2012年にカナダKoboInc.を買収し、電子書籍事業に本格参入。同年6月に一般社団法人新経済連盟の代表理事、2013年1月に内閣日本経済再生本部・産業競争力会議の民間議員に就任。現在は楽天株式会社の代表取締役会長兼社長のほか、公益財団法人東京フィルハーモニー交響楽団理事長なども務める。近著に、経済学者である父との共著『競争力』(講談社)。
企業情報
設立 | 1997年2月 |
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資本金 | 1,082億5,500万円(2012年12月31日現在) |
売上高 | 4,434億7,400万円(2012年12月期:連結) |
事業内容 | 国内グループサービス年間流通総額(取扱高)/4兆円(2012年12月31日時点、金融サービス含む) 従業員数/単体3,498名、連結9,311名(2012年12月31日現在)※使用人兼務取締役、派遣社員およびアルバイトを除く就業人員ベース 事業内容/インターネットサービス(市場事業・トラベル事業など)、金融サービス(クレジットカード事業・銀行事業・証券事業・電子マネー事業など)、通信事業、プロスポーツ事業など |
URL | http://corp.rakuten.co.jp/ |
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