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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

楽天株式会社 代表取締役会長 兼 社長 三木谷 浩史

日米ITトップ対談

グローバルで始まった変革の波に乗り遅れるな

楽天株式会社 代表取締役会長 兼 社長 三木谷 浩史

国内における年間流通総額が4兆円に達する世界最大級のネットモールを築きあげた楽天代表の三木谷氏。米シリコンバレーでネット決済サービスのPayPalを立ち上げ、その成功で得た資金をもとにFacebookをはじめ数多くのスタートアップに投資してきたティール氏。日米を代表するIT起業家が、世界規模の巨大なイノベーションの動きについて語り合った。新経済連盟が主催した「金融カンファレンス」からレポートする。
※下記はベンチャー通信61号(2015年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「デジタル通貨をつくろう」ふたりが共通して挑んだこと

―三木谷さんもティールさんも金融の世界にいた経歴があり、金融領域の事業で実績をあげているという共通点があります。いま、ビットコインをはじめ「(※)FinTech」が続々と登場していますが、この動きをどう評価していますか。

ティール とてもすばらしい現象であり、ブレークスルーだと思います。私はかつて起業したPayPalで新しい決済システムをつくりました。でも、本当にやりたかったのは新しい通貨をつくること。しかし、当時のテクノロジーの水準では不可能でした。

 いま、ビットコインは新しい通貨として登場していますが、それに対応した新しい決済システムはできていません。ですから、ビットコインの今後の課題はそれをつくり、より簡単に使えるようにすること。現段階では一般の消費者が使えるまでにはなっていませんから。

三木谷 インターネットというグローバルなネットワークのなかで、国境を越えた膨大な量の取引が行われている。それに対応するため、まだこれから国家による発行という裏付けをもたない、新しいグローバル通貨が出てくる余地があると思います。現時点でいちばん普及する可能性が高いのはビットコインですが、後発のところにもチャンスはあると思います。

 ネット決済の分野も非常に伸びる余地があるでしょう。いま、国内のスマートフォンの普及率は60%程度。でも、モバイルの銀行口座の普及率はわずか10%。ここに大きなチャンスがあると考えるべきでしょうね。
※FinTech: フィンテック。金融分野における革新的な技術、またはそれに取り組むスタートアップ企業のこと

―日本ではビットコインはあまり普及していません。使える場所がないのが一因です。楽天でビットコインを使う可能性はありますか。

三木谷 考えてはいます。いずれは使うでしょうね。私たちが実施するには、それほどコストはかかりません。問題はどんな規制がかかるかわからないことです。政府がこの分野に対する態度をできるだけあいまいにしているように見えるからです。私が理解している限りでは、明らかな規制の障壁はないと思いますが。

―「楽天市場」ではEdy という独自の決済の仕組みをもうけていますね。

三木谷 ええ。可能性としては、Edyも未来の通貨になるかもしれません。通貨は「平等で測定可能で交換可能なもの」。Edyもその条件を満たすからです。

 私たちは“クレイジーな起業家”だと思います。合法的に通貨を発行することができるのは国家だけですが、私もティールさんも「デジタルで通貨発行する企業体になったらどうだろう」と考えたわけですから。いまはスケールが小さいですが、こうしたことが始まったインパクトは大きいでしょう。近い将来、通貨は再定義されていくと思います。

ティール その通りです。お金というモノは、じつは仮想的な産物なのではないでしょうか。だから、ITと金融を融合させたFinTechが発展していくのは自然なことです。

 ただ、FinTechは政府の規制の強い分野ですから、規制の壁を越えられるのかどうかも考えなければなりません。そこはインターネットのほかのセクターとは違うところです。
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