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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社AIR-U 代表取締役 田中 康之助

IPOを実現した通信ベンチャーがたどり着いた使命

通信環境の「当たり前」を、あらゆる人々に提供したい

株式会社AIR-U 代表取締役 田中 康之助

2017年に創業し、SIMカードやWi-Fiルーターなどの卸売事業を手がけるAIR-U。売上高を堅調に伸ばし、2022年にはTOKYO PRO MarketへのIPOも達成した。そうした実績からは事業の好調ぶりがうかがえそうだが、同社代表の田中氏は「コロナ禍では特に大きな試練を経験した」と語る。コロナ禍はAIR-Uにとってどのような試練となり、それをいかにして乗り切ったのか。同氏に詳しく聞いた。
※下記はベンチャー通信88号(2023年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

主戦場のインバウンド市場が、コロナ禍で失われてしまった

―事業内容を教えてください。

 通信キャリアから調達したSIMカードや自社運用の帯域ネットワークをもとに独自の通信サービス・プランを構築し、再販パートナーに提供する事業を展開しています。たとえば、「国内通信事業」では、中長期利用者向けにポストペイド型のSIMカードを提供。「クラウドサービス運用事業」では、「クラウドSIM」という次世代通信技術を用い、世界中どこでも利用可能なWi-Fiルーターの開発などを手がけています。「インバウンド事業」「アウトバウンド事業」では、訪日外国人客や、海外へ赴く旅行客向けにプリペイド型SIMカードやWi-Fiルーターを提供しています。

 このように、通信に関するさまざまな事業を展開するなか、当社の売上高は2017年の創業以来、右肩上がりで推移し、2022年11月には「TOKYO PRO Market」への上場も果たしました。

―創業以来、順調に成長したようですね。

 そう見えるかもしれませんが、じつはコロナ禍は我々にとって非常に大きな試練となりました。なぜなら、当社は創業以来、インバウンド需要やアウトバウンド需要の取り込みを軸に自社の成長戦略を描いていたからです。2020年の東京五輪を控えるなか、インバウンド需要の取り込みには特に注力し続けてきました。しかし、コロナ禍によって国境を跨ぐ人的な往来が絶たれたことで、我々の主戦場は失われ、それまでに描いていた事業戦略がいっさい実現できなくなってしまったのです。そうしたなか、AIR-Uという会社がいま世の中に対してやるべきことはなんなのか。コロナ禍は、そんな会社の存在意義を深く考え直す機会になりました。

―そこから、どのような考えにいたったのですか。

 事業戦略は大幅に転換せざるをえなかったわけですが、経営理念に込めた想いはむしろ強めることにしました。当社では創業以来、「国境を越えたすべての『当たり前』を。」という経営理念を掲げてきました。コロナ前までは、「国境を越えても、それまでと同じ通信環境を当たり前に使えるサービスを提供する」という意味で、インバウンドやアウトバウンドの事業を展開していました。しかしいまでは、通信に関する「新しい当たり前」をつくるという意味でも、経営理念を追求できると考えるようになったのです。国境を跨がずとも、改めて国内に目を向ければ、通信環境が十分に整備されているとは言えない領域があることに気づきました。インターネットにつながる、電話ができるという「当たり前」を、いかにあらゆる地域や人々に提供していくか。それこそが、いま我々が果たすべき使命だと考えるようになったのです。

国内の通信ニーズに、改めて目を向けられた

―その後は、いかにしてコロナ禍を乗り越えていったのですか。

 オンライン学習やテレワークの市場を開拓することに、事業戦略の軸を大きくシフトしました。たとえば教育現場では、感染症対策として遠隔授業を実施する学校が増えてきました。それによって、教育機関や自治体では、家庭に固定回線を引き込んでいない児童・生徒向けにWi-Fiルーターを貸し出すニーズが急増しました。その際、コロナ禍が収束する見通しがつかないなか、ニーズに合わせて幅広い通信プランを独自に設計できる当社のソリューションを提供してきたのです。この経験から、コロナ禍における我々の使命は、あらゆる家庭で当たり前のように遠隔授業やリモートワークを行える環境を提供することだと改めて考えるようになりました。今後、国内において、不自由のない通信環境をより広いエリアで「当たり前」にしていくためには、社員数や販売拠点を増やしていくことも欠かせません。昨年のIPO達成によって高まった信用力や資金調達力は、そうした事業拡大を進めていくための、大きなバネになると考えています。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 引き続き、通信に関するさまざまなニーズに合わせ、より便利な世の中をつくっていくための事業を推進していきます。たとえば、この地球上には海や山などインターネットや電話がつながらないエリアがまだまだ多くあります。そうした場所へいかに通信環境を提供していくか。日進月歩で発展するテクノロジーを用いながら、そういった課題の解決を図っていく。それによって、今後も新しい「当たり前」をつくり続け、世界に広げていきたいと考えています。
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