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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

MTJ株式会社 代表取締役CEO 山重 柾人

野菜の露天商 からスタートしたベンチャー企業がリリースする新サービスとは

ライブコマースでシェアNo.1を獲り、令和を代表する起業家へ

MTJ株式会社 代表取締役CEO 山重 柾人

「世の中の"もったいない"を解決して世界を熱狂させる」というビジョンを掲げているMTJ。「外食産業をDXする」をコンセプトに、マーケティングコンサルティングやWeb制作、システム開発などのサービスを顧客に提供。顧客の事業をオムニチャネル化し、オンライン・オフラインの販促支援を行っている。来期に売上10億円を見込む同社代表の山重氏は、「今回、満を持して新しいサービスをリリースする」という。同氏に、詳細を聞いた。
※下記はベンチャー通信88号(2023年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

国内だけでなく、世界中がターゲット

―新しくリリースするサービスとはどのようなものですか。

 当社が独自開発した、ライブ動画で商品やサービスを売買できるプラットフォーム『PICNIC』です。このサービスは、「買い物をアップデートする」というコンセプトで立ち上げました。簡単に言いますと、商品やサービスを買ってほしい人が、『PICNIC』でライブ配信を行い、視聴者にアピールして購入を促すのです。ライブ配信にこだわったのは、配信者の熱意がより視聴者に伝わりやすいと考えたからです。配信者は開発者や生産者、あるいは売りたいものがある一般人でもかまいません。インフルエンサーと企業がタッグを組んで、コラボ商品を製作するのもいいでしょう。とにかく配信者は、スマホさえあれば店舗やECサイトを経由することなく、視聴者に直接販売できるのです。ちなみに『PICNIC』は無料で利用でき、商品やサービスが売れた場合にマージン収益と広告収益が当社に入る仕組みです。

―ほかのライブコマースとなにが異なるのでしょう。

 最初から世界をターゲットにしている点です。ライブコマースといえば、中国市場が大きく伸びていますが、それと競争しないよう、日本が誇る製品やサービスを世界に届けたいのです。ご存じのように、日本市場は縮小傾向にあり、国内のみで商品やサービスを提供し続けていれば、明るい未来はありません。ただ、食や伝統工芸品など、世界に誇れるジャパニーズブランドは数多くあります。一方で、それらを求めている海外の人も多い。その人たちに向けて、ライブ配信に多言語の自動翻訳システムを使用して、外国語の字幕をつけるのです。メッセージのやりとりにも、翻訳をつけます。単純な発想ですが、これで配信者は世界に向けて商品やサービスをアピールできるのです。

 また、配信者と視聴者をつなぐ施策も考えています。

―どのような施策ですか。

 たとえば、SNSと同様のやりとりを楽しめるフォローとフォロワー機能のほか、エンタメ性を高めるために、いわゆる「投げ銭」という形で、視聴者が配信者を応援するような機能も実装します。さらに、趣味が合う人たちがコミュニティをつくれるような機能もつける予定です。まだ最終決定ではありませんが、メタバース(※)上でライブ配信が行えるといった具合です。大きな公園では、みんなでお弁当を食べたり運動をしたりするなど、それぞれの小さなコミュニティが集まって好きなことをやっていたりするじゃないですか。「だったら、その空間をデジタル上に創ろう」というイメージですね。『PICNIC』というサービス名をつけたのも、そのためです。

 まずは、4月をメドにリリースして、利用者の反応を見つつ、アジャイル型でさらにつくり込んでいきます。
※メタバース:インターネット上にある、3次元の仮想空間やそのサービスを指す

「もったいない」を解決する、まずそれが根底にあった

―なぜ、そのようなサービスを提供しようと考えたのですか。

 大前提として、当社のビジョンである「世の中の"もったいない"を解決して世界を熱狂させる」を実現するというのが根底にあります。父親が和牛の卸会社を経営している影響もあり、できるだけ早く起業したいと決めていました。そして実際に起業するとき、「どんな会社を創りたいか」を考えたんです。そこで父親の会社を見学した際に、「肉の端材を捨てるのはもったいない」「端材を餃子などの加工品にして、リアルやネットで販売すればいいのにもったいない」と感じたことを思い出したんです。よく考えると、「MOTTAINAI」は世界共通語としてすでに広まりつつありました。起業するならグローバルに活躍すると決めていたので、まずは会社を設立するときに先ほどのビジョンを掲げたのです。

 そして、2期目からビジョンの延長線上として、具体的にライブコマースを見据えるようになったのです。

―どのような経緯があったのでしょう。

 じつは当社、山口県で規格外の野菜を農家から仕入れて台車で売るところからスタートしたのです。ビジョン実現に加え、経営者になるうえであえて、お金がない、人材がいない、信用がないという状況から成長したかったからです。コツコツ始めて、店舗を持とうとなったとき、私のいたらなさからメンバーによる資金の横領に遭いました。そこからなんとか店舗を立ち上げ、SNSによる集客などで持ち直して順調に売上を上げるなか、コロナ禍で大打撃を受けたんです。それが1期目の状況でした。

―大変な状況だったのですね。

 ええ。ただ一方で、「もっと成長できる」とワクワクしていたのも事実です。やがて、知り合いの飲食店からの「SNSの使い方を教えてほしい」という依頼に始まり、Webサイトの制作といった、当社の次の礎となる新たな仕事につながっていきました。そうしたなかで気づいたのは、どんなに良いものを売っていても国内、ましてや地方では商圏が限られてしまうこと。通販は立ち上げにお金がかかるし、世界を視野に入れた場合、プラットフォームは非常に限られていました。この状況は、「非常にもったいない」と考えたのです。そこで思いついたのが、「動画を使ったプラットフォームを無料提供し、世界に発信してはどうか」でした。そして「設立5年でサービスをリリースする」と決め、東京に会社を移転。オンライン・オフラインの販促支援で売上を上げつつ、すべて逆算で準備をしてきました。

今後は積極的に、資金調達を行っていく

―勝算はありますか。

 もちろんです。私はもともと前職で大型フードイベントの企画・運営を担当していたほか、起業後も、2期目からはSNSやWeb制作を通じたオンライン・オフライン双方の販促・集客を行ってきました。そのノウハウやネットワークは、『PICNIC』に活かせます。また、マーケティングのプロやシステム開発のプロなど、本当に「もったいない」くらい私より優秀なメンバーが、想いに共感して集まってくれています。販路拡大に困っている国内の人たちはもちろん、そうしたメンバーに報いるためにも必ず『PICNIC』を成功させます。

―新サービスをどのように成長させていきますか。

 まず、3年以内にライブコマースで国内シェアトップを獲りに行くため、当社は次のフェーズに移行します。

 これまで、システム開発などの準備をすべて自己資金でまかなってきましたが、今後はさらなる飛躍のため、資金調達を行っていく予定です。『PICNIC』の構想段階で、資金調達をする選択もありましたし、実際に出資の話もありました。ただ、私の信念として、自分で売上をつくって出した利益から事業の基盤を構築することにこだわりたかったのです。大根1本150円で売るところから始め、現在は来期の売上10億円を見込めるところまで成長し、『PICNIC』をリリースする準備も整いました。この結果から、当社、そして起業家としての私が投資に値するかどうかを、資金調達時に判断してほしいと。そのほうが、得られる信頼や資金も増えるでしょうから。

「私が日本を盛り上げるんだ」強い責任感と使命感を持つ

―今後の経営ビジョンについて教えてください。

 ライブコマースを当社がけん引していくことで、社会の公器として日本の国益を守っていきたいと本気で考えています。近年、「失われた30年」と呼ばれ、日本は海外から引き離されていると言われています。しかし、日本がもつコンテンツは海外に比べて劣っているわけではなく、マーケティングが下手なだけだと私は思っているんですね。その意味で『PICNIC』は、日本がグローバルで逆転できる最後のチャンスだととらえ、「私が日本を盛り上げるんだ」と強い責任感と使命感を持って取り組んでいきます。

 とはいえ、いまの私には影響力はなく「なにを言ってるんだ」と思う人も多いでしょう。ですから今後は結果を出し続けることで、「ライブコマースと言えば山重」と呼ばれるような存在を目指します。そして私自身が影響力を持つことで、ゆくゆくは実現したい大きな目標があります。

―それはなんですか。

 令和を代表する起業家になることです。私は、サイバーエージェントの藤田さんやDeNAの南場さん、楽天の三木谷さんといった起業家を尊敬していて、私にとってはヒーローのような存在なんですね。起業してからは憧れではなく、その人たちに追いつき、追い越せるような存在になりたいと思うようになりました。そのため『PICNIC』を普及させ、ライブコマース事業において国内で圧倒的No.1のシェアを持ちたいのです。

 目標実現に向け、『PICNIC』と併せて今年から「和牛の輸出プロジェクト」を立ち上げました。欧州各地や中東・ドバイに出向いて現地の外食企業と商談。さらに取締役たちは、新サービスの開発強化のためベトナムに出向き、エンジニアの確保も急いでいます。

 まずは売上100億円を目指しますが、それはあくまで通過点。日本のスタートアップが世界でも通用することを、私自身で証明してみせます。
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