INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
「宅急便」の生みの親
ヤマト運輸株式会社 元会長 小倉 昌男
※下記はベンチャー通信7号(2003年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―小倉さんの経営哲学はどのようなものなのでしょうか。
小倉:常に消費者の側に立ち、生産者中心の考え方はやめなさい、ということです。消費者中心の企業経営が大切です。消費者に支持されない企業は間違いなく潰れます。消費者に支持されるということを企業理念に掲げる会社、今の言葉で言えばCS(コンシューマーサティスファクション)経営をしている会社は、やはり成功してますよね。
―ヤマト福祉財団の事業についてお聞かせください。
小倉:障害者の福祉の仕事をしています。日本の障害者は恵まれない状況にあります。仕事も働き場も無い。したがって収入が無い。本当に月給1万円の世界です。だから障害者手当てが支給されるわけですが、お金があれば幸せか?というとそうではありません。みなさんも毎日が日曜日だと苦痛でしょう。人間には働きたいという基本的欲望があります。お金も欲しいけど、働くことによって自分の創造性が発揮できるんです。生きがいは、やはり働く場でしか達成できません。私は、働く能力はあってもそれを発揮する場がないという障害者に働く場を作ってあげたいんです。つまり、ノーマライゼーションの世界にしたい。障害があろうとなかろうと関係なく「働く権利」を発揮できるような社会的仕組み、それがノーマライゼーションです。世間では、「障害者が作ったから買って下さい」というのがよくありますが、それは逆に差別だと思います。べつに障害者であることを言う必要もない。障害者が働いていることを誰も気にしない世界を作りたいんです。ところが、健常者が障害者に対して偏見を持っているからノーマライゼーションが進まない。障害者の能力が低いとか働く意欲がないといった偏見が多いんです。そんな誤解は初等教育の段階で無くさなければなりません。私はもう78歳で耳と足が悪いので、本当に障害者の一歩手前です。自分がそういう状態だから、障害者の気持ちがよく分かるんです。私の第二の人生は経営の世界ではなく、障害者の世界で過ごすつもりです。
―今の日本の状況をどう思われますか。
小倉:困ったもんです。このまま行くと日本は危ないと思います。日本は生産面で非常に遅れをとっています。かつて日本は技術力が進んでおり、しかもそれを支える人口や安い労働力もありました。しかし、その構図ががらっと変わって、すべて東南アジアに持っていかれてしまった。東南アジアの技術力は日本よりも優れているものも多いし、人口も圧倒的に多くて労働力も安い。これではまともに競争できません。そのため日本はITのような高付加価値産業を中心に競争しなければならなくなります。IT分野で日本はやっとアメリカに追いついたばかりですが、まだまだ挽回できる余地もあると思います。しかし、まずは役人が作った多くの規制を無くさないといけない。不必要な規制があるとうまくいきません。私も宅急便を始めるにあたって規制と対決しなければなりませんでした。そこで分かったのが、規制は役人のためにあるということです。役人が規制を作って、自分たちの都合のいいように使っている。日本を良くするためには、この現状を変えなければいけません。これからは役人主導を改めて民間主導でいかなければならないと思います。
※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。