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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久

設立わずか9年で東証一部に上場した企業のトップが語るベンチャー観

大手企業を逆転するチャンスが到来

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野 慶久

インターネットがちょうど社会に普及し始めた1997年、現社長の青野氏が会社の上司だった高須賀宣氏、大学の先輩だった畑慎也氏と3人で立ち上げたサイボウズ。低価格で簡単・便利に扱えるWebを利用したグループウェア「サイボウズOffice」シリーズを武器に、大手独占のシェアを猛追。設立してわずか9年目で、東証一部に上場。10年目以降は、5年連続で国内グループウェア市場にて※トップシェアを維持している。また、インターネット上でサービスを提供する※クラウド・コンピューティング事業にも積極的で、昨年販売されたクラウドサービス「cybozu.com」は、提供開始から6ヶ月で導入企業が1,000社を超えた。今後は新たなクラウド・コンピューティング事業を軸に、日本はもちろん、グローバル展開も着々と進めている。日本一から世界一のグループウェア企業を目指しつつ、“イクメン”としても知られる青野氏に、起業のきっかけから今後の展望、さらに日本のベンチャー企業の未来などを聞いた。
※下記はベンチャー通信49号(2012年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―昔から起業したいという気持ちは持っていたのですか?

青野:起業するなんて、まったく考えてなかったですね。もともとプログラミングが趣味で、中学・高校・大学とゲームなどのプログラムをつくっていたんです。それで将来はプログラマーになろうと思っていたんですが、大学の研究室でひとつ先輩の畑さんのプログラムを見て「ああ、これは勝てないな」と。本当にきれいなプログラムで、自分がどんなに努力してもそこまでのレベルに到達できないと直感でわかったんです。そこで、一度人生がリセットされました(笑)。

―その後、松下電工(現:パナソニック)に入社したんですよね。

青野:入社後に配属された営業企画部では、100名の社員に対してパソコンがわずか3台。日々の報告書はワープロ専用機で書くという、私にとってはありえない環境でした。仕方がないので、自前のパソコンを持ち込んで業務を行っていましたね。それから、事業部内にパソコンを配布してネットワークや電子メールなどの環境を整える仕事などを、徐々に任されるようになりました。

―そこから起業した経緯を教えてください。

青野:やがて、もっと積極的にコンピュータを扱った仕事に関わりたいと思うようになり、社内ベンチャー制度を利用して、システムインテグレーションの会社の立ち上げに参加したんです。そこで、出会ったのが高須賀さんでした。業務内容は、顧客から依頼を受けたシステムをつくるのがメイン。ただそうなると、自分たちが考えたパッケージソフトを作りたくなってくるわけですよ。そこで、当時ジャストシステムで働いていた畑さんを誘って、パッケージソフトの開発に参加してもらおうとしました。でも、社内では新事業になるため、なかなか理解を得ることが難しくて。それなら、自分たちで新しく会社を立ち上げるしかないなと。

―十分な資金もないまま大企業を辞め、会社を立ち上げることにためらいはなかったのでしょうか?

青野:まったくの若気のいたりで、うまくいくと信じ込んでいました。ちょうどその当時はアメリカでベンチャーブームが起こっていて、「かっこいいな」という憧れの部分も大きかったですね。無一文からスタートしてこそベンチャーだと意気込んでいたくらいで。今から考えると、本当に怖いもの知らずでしたね(笑)。 とはいえ、それなりに勝算はありました。ちょうどその時期は、会社でパソコンが普及し出した頃で、情報共有のソフトが求められていた時代。そして、webを利用して情報共有するグループウェアのパッケージソフトは、従来のソフトのように利用者のパソコンにソフトをインストールする必要もない。必ずこれからの主流になると確信していましたね。

―それから3名で、愛媛県松山市で会社を設立しました。

青野:最初はとにかく安く始めたかったので、田舎で会社を立ち上げようと考えました。たまたま私と高須賀さんが愛媛県出身だったんで、場所は松山市に決定。2DKのマンションで家賃は7万円。しかも一室には畑さんが住んでいるという状態でした。開発は畑さんが担当して、3人をまとめるのが高須賀さん。私は、販売を担当することになりました。

―会社が軌道に乗るまでどれくらい時間がかかりましたか?

青野:じつは、8月に会社登記の手続きをして10月にソフト販売を開始したんですが、12月の段階ですでに黒字に転化したんです。当時、グループウェアの市場はロータスディベロップメント(現IBM)の『Lotus Notes』、マイクロソフトの『Microsoft Exchange』など大手が独占している状態でした。そこで当社は、店舗販売を行わず、インターネットに興味のある人にターゲットを絞り、ダウンロード形式の販売を選択。パッケージを作るコストや手間を削減し、大手の約10分の1の価格で提供したんです。さらにこだわったのは、ソフトをダウンロードしてからインストールするまでの工程を簡潔にすること。現場の担当者が必要としているのは、たとえサーバーのOSやスペックがわからなくてもクリックしていくだけで使える状態になることなんです。

 私は前職で部門の情報担当者でしたから、まさにターゲットそのもの。普段の業務において、どんなことに困っていて、どんな機能を必要としていて、どんな価格なら購入するかなどを知っていたんですよ。「安くて簡単で便利」を追求したことが、急速な顧客獲得につながったのだと思います。
※トップシェア:「2011年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」(株式会社ノークリサーチ調べ)より
※クラウドコンピューティング:パソコンや携帯電話内ではなく、ネットワーク上にあるサーバーのサービスを利用してソフトウェアやデータなどを管理する手法
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