INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
おもしろいことをやれば成功する
堀場製作所 創業者 堀場 雅夫
太平洋戦争、敗戦、高度経済成長、円高不況、バブル崩壊・・・。堀場雅夫は学生起業家の草分け的存在として、戦後の日本経済と歩みを共にしてきた。堀場が興した堀場製作所は、今や年商1400億円以上を誇る分析機器の世界トップメーカーになった。現在、堀場は日本新事業支援機関協議会(JANBO)会長など、精力的に起業家育成にも取り組んでいる。また、著書に『イヤならやめろ!』、『出る杭になれ!』、『仕事ができる人できない人』など、ベストセラーも多数。シンプルで本質を突くメッセージが、多くのビジネスマンから支持されている。今回は日本を代表する起業家、堀場雅夫に “ベンチャー論”を聞いた。
※下記はベンチャー通信38号(2009年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―京都という土地は、御社を始め京セラ(ファインセラミック)、日本電産(モータ)、オムロン(制御機器)、ローム(半導体)など、数多くの世界企業を生み出しています。京都にはベンチャー企業が生まれやすい土壌があるのでしょうか。
堀場:京都には繊維工業、窯業など、軽工業の1200年の歴史があります。今でこそ軽工業は伝統産業になっていますが、当時は最先端の高付加価値産業でした。つまり、京都には軽工業を中心とした技術の蓄積があるんです。その蓄積した技術から、数々の新技術が生まれた。だから、京都にはベンチャー企業が多いのです。たとえば、※ファインセラミックス技術のルーツは、「清水焼」など伝統的な焼き物(陶磁器)の技術にあります。半導体技術のルーツは、写真製版の転写技術にある。精密機器の表面処理技術のルーツは、仏壇などの金めっき加工技術です。任天堂の場合は技術的なつながりはありませんが、テレビゲーム機の文化的なルーツは花札やカルタにあります。つまり、どんな新しい産業にも必ず何かしらのルーツがある。何も無いところから、こつ然とベンチャー企業が生まれたわけではないんです。 また、京都人はホンモノ志向です。人マネをしないので、オリジナリティのあるオンリーワン商品が生まれやすい。実際、京都には世界トップシェアの商品がたくさんあります。京都人は「京都が日本の中心」だと思っていますので、もともと日本一や世界一を目指す志向性があるんです。京都では、本社を東京に移転すると「都落ち」と言われます。経営が苦しいから東京に行ったんちゃうかと(笑)。
※ファインセラミックス:組成や組織、形状、製造工程を精密に制御し、新しい機能や特性をもたせたセラミックス(陶磁器)のこと。
―堀場さんは「京都市ベンチャー企業目利き委員会」の委員長を務めるなど、ベンチャー企業の支援に力を注いでいます。その理由を教えてください。
堀場:大企業には人材、ノウハウ、資金が豊富にありますが、大企業が真に新しいことには挑戦できないからです。多くの大企業は過去の成功体験に縛られて、なかなかイノベーションを起こせない。でもベンチャー企業ならば、思い切って新しいことに挑戦できる。私はベンチャービジネスを生み出し続けることが、日本経済全体の活性化につながると考えています。
―ベンチャー支援のあり方について、どう考えていますか。
堀場:過去の日本のベンチャー支援はやり方を間違っていたかもしれません。私は30年前から京都でベンチャービジネスを支援してきました。国も財界も大学も、これまでに様々なベンチャー支援をしてきました。しっかりした国の政策もあったし、資金面の支援も不足していたわけではなかった。でも、結果としてうまくいかなかった。失敗の理由は何か。なぜうまくいかなかったのか。いま、私は失敗の理由を、「日本のベンチャー支援がシリコンバレー型のベンチャー企業を対象にしていたから」だと考えています。 シリコンバレー型のベンチャー企業とは、まったくゼロの状態から新しいものを創り出すタイプのベンチャー企業のことです。でも、そのタイプのベンチャー企業は日本人に向いていない。日本人と※アングロサクソンは気質が違うんです。昔から「農耕民族」と「狩猟民族」の違いだと言われてきましたが、遺伝子も違うことが最近わかりました。
※アングロサクソン:イギリス人、イギリス系の人々のこと。アングロサクソンが多い国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど。
―もう少し詳しく教えてもらえますか。
堀場:人間は新しい情報に接すると、脳内でドーパミンなどの快楽物質が分泌されます。そして、そのドーパミンを受容体がキャッチする。その受容体の遺伝子型には複数のバリエーションがあり、それが人間の「新奇性追求」気質と関連があることが分かったんです。つまり、「新しいモノに対する好奇心」には遺伝的な影響があるということです。 そのドーパミン受容体の遺伝子型には、「弱」、「中」、「強」の3種類があります。アングロサクソンは「強」のタイプが50%もいるのに対して、日本人はわずか2%しかいません。
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