ベンチャー通信Online > 起業家インタビュー > 注目 > 株式会社Sales Marker CEO 小笠原 羽恭

INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社Sales Marker CEO 小笠原 羽恭

IPOやグローバル展開を見据えた急成長SaaSスタートアップ

「インテントセールス」を浸透させ、数ある企業の成長を後押しする

株式会社Sales Marker CEO 小笠原 羽恭

海外では主流な、「インテントセールス」という新しい営業手法を実現するSaaS(※)『Sales Marker』をBtoB企業向けに提供しているSales Marker。創業して3年目ながら、すでにARR(年間経常利益)15億円を達成し、グローバルに見てもほかに類を見ない速度で急成長を遂げているという。2023年12月に社名変更したという同社CEOの小笠原氏に、「インテントセールス」の詳細や社名を変更した理由、今後のビジョンなどを聞いた。

※SaaS : Software as a Serviceの略。ユーザーがインターネットなどのネットワークを経由して、ソフトウェアやアプリケーションを利用できるサービス形態のこと
※下記はベンチャー通信90号(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

ニーズがある企業に、狙いを定めてアプローチ

―事業内容を教えてください。

 BtoB向けの「インテントセールス」を実現するSaaS『Sales Marker』の開発・提供をしています。「インテント」は直訳すると「意図、目的」を表しますが、ここでは企業の担当者などがWeb検索を行った「意図、目的」を指します。『Sales Marker』を使えば、そうしたWeb上の行動履歴データを可視化・分析したうえで、見込み客がどのようなソリューションの購入を検討しているのかを事前に把握し、営業に活用することが可能。顧客ニーズの有無に関係なく手当たりしだいに営業するのではなく、「自社のサービスを必要としている企業」に狙いを定めてアプローチすることで、営業活動の効果・効率を最大化させられるのです。「顧客起点」で行う、新しい営業支援サービスだと言えるでしょう。

―具体的にどのようにして営業支援を行うのでしょう。

 我々は、「インテントセールス」を4つのステップで構成されていると定義しており、ステップごとに『Sales Marker』を活用した支援を行います。1つ目は、企業担当者などのWeb検索の行動履歴データから興味関心の対象や検討の段階を推測したうえで企業をターゲティングします。2つ目は、ターゲティングした企業に向けて、どの部署の誰に対してアプローチするべきかを選定します。こちらは、SNSや人事異動といった公開情報をもとに抽出した、370万件の人物データと150万件の部署データを参考にするのです。

―残り2つのステップの支援内容を教えてください。

 3つ目は、ニーズに合わせた提案資料の作成です。検索したキーワード、提案する部署や担当者などから訴求内容をカスタマイズすることで商談確度を高められます。4つ目が、マルチチャネルを活用したアプローチです。電話やSNS、メールなど最適なチャネルを業界や対象者の属性などから分析してアプローチするのです。

 我々は、独自のAI技術とデータ、ノウハウでこれらの仕組み化を実現。「最適な情報」を「最適な人物」に「最適なタイミング」で「最適なチャネル」を使って提案することができるのです。

「二度と営業をやりたくない」そんな状況を打破したい

―「インテントセールス」に着目した理由はなんだったのですか。

 大きく3つあります。1つ目は私が前職時代に、経営コンサルタントとしてクライアントの新規サービスの市場開拓支援をしていたときの経験です。クライアントの顧客と市場を分析したうえで、ニーズがある可能性を「A社は80点、B社は78点」と顧客別にスコアリングしていたのですが、その準備に約3ヵ月かかっていたのです。そこまで時間がかかると、すでに顧客のニーズが変わってしまう可能性が高いことに課題を感じていました。

 2つ目が、当社COOの荻原と起業前に交わした会話です。彼はキーエンス出身で、社内のセールスで全国1位を獲得した経験があるのですが、その大きな要因として顧客が求めているタイミングに合わせて提案していたとのことでした。それは彼の綿密なヒアリングなどを通じた営業努力の賜物でしたが、やはり営業にはタイミングが重要であることを再認識したのです。

―3つ目の理由はなんですか。

 従来の営業方法に疑問を持っていたことです。たとえば、やみくもに営業電話をかけても効率が悪いうえに、ニーズがないタイミングの場合は先方に怒られるケースも少なくありません。それが続けば精神的に負担がかかってしまい、「二度と営業をやりたくない」となる。私の周りにもそんな知人がいました。このような状況を打破できる支援があれば、社会的にも意義が大きいと考え、「事前に顧客ニーズを把握し、タイミングよく提案できるサービス」があればと考えたのです。

 そのタイミングで海外をリサーチしたところ、すでに「インテントセールス」を活用したサービスが普及しつつありました。日本ではまだ一般的ではなかったため、起業して『Sales Marker』を開発・提供するにいたったのです。

次のステージを見据えて、社名を変更

―リリース後の反響はいかがですか。

 『Sales Marker』をリリースしてまだ2年ですが、すでにスタートアップから大手企業まで350社超の企業が導入しています。また、導入したクライアントからは、リード数や商談数、成約数のアップといった定量的な成果だけでなく、「アウトバウンド営業なのに『今ちょうど探していました』と感謝されました」といったケースがどんどん出てきています。クライアントに貢献するのはもちろんですが、その先にあるエンドクライアントの困りごとの解決にも貢献できるのが『Sales Marker』の特徴でもあり、我々も大きなやりがいを感じるところですね。

―2023年12月に社名を変更した理由を教えてください。

 会社を次のステージに進めていくためです。おかげさまで『Sales Marker』というサービス名の認知度は高まる一方で、以前の社名である「CrossBorder」は、思い入れは強いものの、認知度は高くなかったため、今後の採用活動も含めた会社の運営のために統一したのです。

 また、社名変更と同じタイミングで会社のパーパス、ビジョン、バリューを再設定しました。私自身、こうしたメッセージを社内外に発信するのが、会社を強くしていくことにつながると考えているのです。パーパスを例にすると「全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る」と掲げています。そのため、「挑戦したい」と考えている人材にメンバーになってもらいたいですし、現メンバーもそうした人材が集まっています。挑戦は個人の夢でもかまいませんし、それを応援できる組織でありたいと思っています。

挑戦することで、自己成長につなげてほしい

―今後のビジョンを教えてください。

 「インテントセールス」を浸透させることで、数ある企業の成長を後押ししたいと考えています。当社は2022年3月にサービスをリリースし、半年でARR(年間経常利益)1億円を達成。その後半年で3億円、さらに半年後に9億円を達成し、リリースしてから2年で15億円を達成しました。これは、ユニコーン企業(※)になるための成長速度と言われている指標を2倍の速度で達成している計算です。手前味噌ですが、投資家の方々から「日本でもグローバルでも、ここ10年で見たことがない成長速度です」と評価いただくことが多いですね。今後はそうした成長におごることなく、IPOやグローバル展開も含めて挑戦し続けていきたいと考えています。

―ベンチャー企業で成長したいと考えている若手にメッセージをお願いします。

 改めて、「挑戦したい」と考えている人は当社に向いていると思います。たとえば、「営業出身だけどマーケティングに挑戦したい」というメンバーが、現在部門を横断して活躍しています。また、「子どもの頃からハンバーガー屋をやりたかった」というメンバーが、キッチンカーを使って「セールスバーガー」という名前をもじったハンバーガーを1日限定で社外販売して完売したこともあります。この例はあくまでイベントの一環でもありますが、社内では一人ひとりの目標や夢をリスペクトして応援する環境があります。私は上司から「とりあえずこれやっといて」というアサインメントを行う環境はあまり好きではなく、個々人の成長を妨げると考えています。ぜひ、当社で挑戦することで、自己成長につなげていってほしいです。
※ユニコーン企業 : 評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場のベンチャー企業を指す
※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。